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奥野修司ノンフィクション作家

▽おくの・しゅうじ 1948年、大阪府生まれ。「ナツコ 沖縄密貿易の女王」で講談社ノンフィクション賞(05年)、大宅壮一ノンフィクション賞(06年)を受賞。食べ物と健康に関しても精力的に取材を続け、近著に「本当は危ない国産食品 」(新潮新書)がある。

進次郎農相が検討「入札備蓄米 買い戻し」には重大リスク…「平成のコメ騒動」の二の舞の恐れも

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今年も収穫量は期待薄なのに…

 その理由はこうだ。24年産の作況が平年並み以上といわれながら、実際はかなり減少していたのは、主に異常気象が原因だった。今年も猛暑が続くうえ、激しい大雨が増え、台風の強度も強まると気象庁は予測している。さらにカメムシの大量発生も予測されているのだ。いずれも米の収穫量を下げる原因である。

 とくに作付面積が多いコシヒカリは高温や台風に弱い。かといって作り慣れた品種を替えるのは簡単ではない。それに種もみは前年に作られるものだから大幅に替えるのはむずかしい。つまり、今年も生産量が予想を下回ることもあり得るということだ。

 現在、主食用米の需給動向を測る指標の「6月末民間在庫量」は、備蓄米の放出の影響で適正量に戻ると農水省は予測している。予測が正しければ、次の新米が出るまで安心できるということである。

 仮に一般入札米を買い戻さなかったとする。25年産米の作況が良くて増産になれば、余った米は備蓄米に回して相対価格の調整弁にすればいい。政府の倉庫は空なのだから存分に活用できる。作況が悪ければ、一般入札米をJAなどから買い戻し、さらに政府が倉庫に備蓄している超古米をこれに加えて放出すれば次の新米まで何とかしのげるだろう。

 もしも一般入札の米を買い戻して消費してしまったとする。作況が良ければいいが、悪ければ打つ手がなくなり、海外に頼るしかなくなる。それこそ「平成の米騒動」の二の舞いになりかねない。

 備蓄米の買い戻しは、25年産米の作況が明らかになってからでもいいのではないか。あと2、3カ月の辛抱なのだ。

  ◇  ◇  ◇

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