富士山が噴火したら…首都圏はどうなる? 元国立極地研究所所長・島村英紀氏が解く
■噴火は16日間続き、東京には噴煙が……
また、江戸城など江戸の中心部にいた旗本・政治家・学者でもあった新井白石は自叙伝『折たく柴の記』で、『はじめに白い火山灰が雪のように降り、やがて黒い火山灰に変わった』ことを記している。降りしきる灰のために、江戸では昼間でも燭台に明かりを灯さねばならないほど暗くなっていたことも書かれている。
白石が記録したように江戸で降った火山灰が途中で変化したのは、最初は二酸化ケイ素を多く含んだ白っぽい火山灰、数時間後には、二酸化ケイ素が少なく黒っぽい火山灰に変わったからである。前述のように、白っぽい軽石や火山灰は密度が小さいデイサイトマグマから、そしてスコリアや黒っぽい火山灰は、密度が大きい安山岩マグマから出来ていた。
噴火は16日間続いたが、江戸では火山灰が断続的に降り続いた。ときには黒い大粒の火山灰が降りしきって、家々の屋根に落ちる音が大雨のようだったという。このとき江戸市中に降りつもった火山灰は、その後も強い風が吹くと飛散したために、市民は富士山の噴火後も長期にわたって呼吸器疾患に悩まされた。