蒲田「天ぷら すずき」で生ビールとチューハイで、そして揚げたての天ぷらをかき込む至福
中くらいの大きさのトマトが4個で322円(税込み)。北海道産の玉ねぎとジャガイモがそれぞれ3個で106円(税込み)。これを聞いて男性読者諸氏はどう思われるか。
高いとか安いとかピンと来ないようだったら熟年離婚は近いと思った方がいい。とくにリタイア世代の方々。冒頭から穏やかじゃない話で恐縮だが、「買い物や炊事洗濯はカミさんお任せ」なんて言ってるといきなり離婚届が枕元に……なんてことになりますぞ。種類や見栄えはさておき、この価格は野菜高騰の昨今、ベラボーに安い。
さて、野菜をこんな価格で売っているのは蒲田西口サンロード商店街のとある青果店。道幅5メートルほどの狭い商店街だが古い喫茶店やら、ご婦人御用達の安い洋品店などが健在で、まさに昭和の商店街だ。並行して地元民御用達のサンライズ商店街と昼から安く飲めるバーボン通りが並んでいる。
そんな土着型激戦地区に打って出て連日大賑わいの店がある。それが今回伺った「天ぷら すずき」だ。店はサンロードのドンツキにある。周りの店が賑やかなだけに白い暖簾がすがすがしい。オープンしてまだ9年目ということだが、早くも老舗の貫禄を感じさせる。伺ったのは日曜日の昼下がり。揚げたて天ぷらでイッパイやろうって魂胆。でもね、考えることはみな同じでこの暑さで6組ほどの行列。コの字カウンターの店内をのぞくと熟年夫婦や若い男女が生ビールやハイボール片手に天ぷらを楽しんでいる。
汗を拭き拭き待つこと15分、ようやく店内に。アタシは上天定食(1400円)と生ビール(550円)。ほとんどの客はお好みで揚げたてをつまみながらお酒を楽しんでいる。高級店のような気取りがなく実にいい。ここ蒲田から少し行けば羽田だ。昔はあの辺りに庶民的な天ぷら屋が多く、江戸前の穴子なんかを安く食べさせてくれたことを思い出す。ビールを飲みながら待っていると来ましたよ~。まずはエビとイカ。熱々を口に放り込む。うまい! 「天ぷらは親の敵みたいに食わなきゃだめだ」と言ったのは池波正太郎。揚げたそばから食え、ということ。だからアタシは天ぷらを食うときは1人がいい。寿司と焼き肉もそう。自分のペースでやれるから。連れを気にしていると食った気がしない。