「まるいち鮮魚店」では市場が相手にしない魚も隣の食堂で食べられる
魚代+250円で刺し身、+350円で煮物に
店先で魚を選りすぐっていると、「朝取れだからどれも刺し身でいけますよ」と笑顔でやさしく声をかけてくれたのは、英さんの母・美智世さんだ。
「隣が食堂ですから、こちらで注文をして召し上がれます」
魚を買って隣の食堂で待てば、料理されて運ばれるのだ。ならば地元でアカサバと呼ぶ、ハチビキを食べてみたい。40センチはあろう1匹が1900円。半身を刺し身に、半身は煮つけてもらおう。
その食堂は、昔の漁師家にお邪魔したようで、畳部屋は狭いながらもしっとりと落ち着く。壁に張られた価格表には、刺し身は魚代+250円、煮つけは+350円と明朗会計だ。
腰がすわれば、まずは生ビール! 早々に登場した刺し身はその名の通り、身まで赤くてサバの食感。赤身でもマグロとは違うほのかな甘みを感じつつ、わずかな身の締まりから日持ちのしない魚なのだと分かる。都会では味わえない一切れをしみじみ味わっていると、煮魚の甘辛い香りが漂ってきた。
醤油色の濃い味つけは関東煮と呼ばれ、関西の薄味に対抗するかのようで小気味いい。東京の下町あたりでは庶民の味だったが、近年は真っ黒い煮魚に出合えない。店頭に並ぶタカノハダイやニザダイも、甘辛味の煮つけがうまい。
肉厚の背に箸を入れると、赤身は火が通って白くなっている。身が軟らかいから、舌で煮汁を絞る食べ方だ。骨までしゃぶり尽くして、お湯を注ぎたくなるのは魚がおいしかったからだ。
10月ごろは例年、カサゴやマゴチ、ヒラメなど白身魚がよく並ぶという。地魚を専門とするだけに、日々の魚種や価格は変動する。それでも庶民価格。三崎を存分に味わえる魚屋だ。
(住)神奈川県三崎市三崎3-5-12
(℡)046-881-2488
(営)午前11時~午後3時ごろ。定休・水



















