(12)好きな酒肴 その1
締めは、人気の一品。小さな椀に軽く米をよそい、マグロの頭の刺身、三つ葉、海苔、ワサビをのせて、白ゴマを振り、おでんのつゆをかける。これを「かけめし」というのだが、脇の小皿にはカブとキュウリのぬか漬けが盛られ、削ったばかりのかつお節が振ってある。
日ごろ酒場で締めの茶漬けは喰わないほうだが、「かけめし」は話が別だ。食べきってしまうのがもったいないと思えるほどうまいのだが、あっという間に椀は空になる。
たいへん満足して言葉なし。手持無沙汰な気分になって小皿のカブに箸をのばせば、ああ、酒はあと1本、いただきたい。外は極寒、真冬の夜だからこそ燗酒のありがたみもひとしおだ。気が付けば、カウンターの客の顔はどれも、上気して、実に嬉しそう。ファンが多いので店名は伏せるが、神田の名店である。



















