(30)河川敷のビールはうまし
ビールのプルトップを開け、ひと口飲む。コンビニを出てから15分ほどしか経っていないから、まだ冷たく、喉越しはさわやかだ。
時代小説の短編集を開き、2、3ページ読んだが、頭に入ってこない。軽い眠気が心地いい。私の視線の先で、竿を構える少年は、身じろぎもしない。なかなか根気がある。小鮒でもクチボソでも釣れるといいのだが。エサは何を使っているか? 練りエサなんかより、ずばりミミズでもつけたら、小鮒どころか、けっこうなサイズの鯉が狙えるだろうに……。ここより20キロほど上流の、やはり多摩川に近いところに住んでいる私は、自分が釣り糸を垂れているような気分になっていた。
そうこうしているうちに、眠りに落ちた。1本の缶ビールがよく効く。そんな日が、私にもある。どれくらい眠っただろう。少し寒さを感じて目が覚めた。
親子連れの姿はもうなかった。私は川に沿ってしばらく下り、東急多摩川線の下丸子駅から蒲田まで乗った。京急蒲田の駅前で居酒屋に入ったのは、やはり缶ビール1本では酒が足りないからだ。
名も知らぬ初めての店で、ホッピーを頼み、ポテトサラダをつまむ。はあ、うまいねえ。5月の陽にあたって、少し焼けたのか。頬や額に熱がこもっている。そのほのかな熱が冷めていく間に、ホッピーの中のお代わりを1杯、また1杯。
あの少年。釣れたかな……。河原の光景を思い起こしていると、鯉が岸辺近くの水面を揺らしながら岸から離れていくのが、見えるような気がした。

















