著者のコラム一覧
大竹聡ライター

1963年、東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、出版社、広告代理店、編集プロダクションなどを経てフリーに。2002年には仲間と共にミニコミ誌「酒とつまみ」を創刊した。主な著書に「酒呑まれ」「ずぶ六の四季」「レモンサワー」「五〇年酒場へ行こう」「最高の日本酒」「多摩川飲み下り」「酒場とコロナ」など。酒、酒場にまつわるエッセイ、レポート、小説などを執筆。月刊誌「あまから手帖」にて関西のバーについてのエッセイ「クロージング・タイム」を、マネーポストWEBにて「大竹聡の昼酒御免!」を連載中。

(30)河川敷のビールはうまし

公開日: 更新日:

 ビールのプルトップを開け、ひと口飲む。コンビニを出てから15分ほどしか経っていないから、まだ冷たく、喉越しはさわやかだ。

 時代小説の短編集を開き、2、3ページ読んだが、頭に入ってこない。軽い眠気が心地いい。私の視線の先で、竿を構える少年は、身じろぎもしない。なかなか根気がある。小鮒でもクチボソでも釣れるといいのだが。エサは何を使っているか? 練りエサなんかより、ずばりミミズでもつけたら、小鮒どころか、けっこうなサイズの鯉が狙えるだろうに……。ここより20キロほど上流の、やはり多摩川に近いところに住んでいる私は、自分が釣り糸を垂れているような気分になっていた。

 そうこうしているうちに、眠りに落ちた。1本の缶ビールがよく効く。そんな日が、私にもある。どれくらい眠っただろう。少し寒さを感じて目が覚めた。

 親子連れの姿はもうなかった。私は川に沿ってしばらく下り、東急多摩川線の下丸子駅から蒲田まで乗った。京急蒲田の駅前で居酒屋に入ったのは、やはり缶ビール1本では酒が足りないからだ。

 名も知らぬ初めての店で、ホッピーを頼み、ポテトサラダをつまむ。はあ、うまいねえ。5月の陽にあたって、少し焼けたのか。頬や額に熱がこもっている。そのほのかな熱が冷めていく間に、ホッピーの中のお代わりを1杯、また1杯。

 あの少年。釣れたかな……。河原の光景を思い起こしていると、鯉が岸辺近くの水面を揺らしながら岸から離れていくのが、見えるような気がした。

【連載】大竹聡 大酒の一滴

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