<1>住み慣れた郊外の自宅が重荷に…ところが3000万円で買ったのに査定では…
人生100年時代といわれるが、長生きと住まいの問題は比例しない。住み慣れた自宅が重荷になってきた老夫婦が、ついのすみかを求めてさまよう姿を追ったーー。
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今年75歳になって、後期高齢者入りした遠井安男(仮名)は、大した持病があるわけではないが、そろそろ人生の最後を安心して暮らせる住まいを見つけたいと思っている。
現在は、40年ほど前の会社員時代に埼玉県熊谷市の郊外に、3000万円ほどで買った建売住宅に住んでいる。会社までの通勤時間は2時間以上かかったが、バブル時代にはそれくらいかかるのは当たり前だった。
しかし、それがついのすみか探しの最大のネックになっている。「この間、駅前の不動産会社に査定してもらったら、何と700万円という結果。そんなはずはないと、他社にも頼んでみたが、結果は同じでした」と嘆く。いまどき、郊外の築40年以上の古い一戸建ての建物の価値はゼロどころか、リフォーム費用や解体費用を考えるとむしろマイナス。実質的には土地代でしか売れないと言われてしまったのだ。