「夢グループ」の“こだわらない”商品開発 「売れ筋をマネして機能を良くして安く売るだけ」(後編)
福島なまりの社長とアシスタント女性によるCМをはじめ、独自の広告宣伝で商品は大ヒット。今や年間151億円を売り上げる通販会社「夢グループ」。
サイクロン掃除機、ジェルクッション、卓上クーラー、翻訳機…どこかで見たことのある商品の数々。実はこれらすべて自社開発商品。CМをはじめ広告制作の95%を自ら行い、「うちのオリジナルは売り方だけ」と話す石田重廣社長(63)に商品開発について聞いた。
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「基本は売れ筋商品のモノマネです。普段からデパート、ユニクロ、ニトリなどを回ってチェックしています。ニトリの社長には悪いけど、ニトリだったら奥さん方が一番手にしている商品を、特許面をクリアしたらさらに機能を良くして安く売る。翻訳機やダイソンもどきのサイクロン掃除機もモノマネです。ジェルクッションだけは珍しくモノマネのようでモノマネでないんです。ジェル商品を考えている時に卵が思い浮かんだんですね。これなら座っても(卵が)割れないし、コマーシャルにすればすごい売れるぞと。でも基本的に、僕には新しい商品の発想はなかなか湧きませんから」
電化製品から衣類まで、アジア圏の工場でOEМ(委託生産)で作らせている。
■駐在員採用のルール
「香港や中国をはじめいろんな国で仕事もしているので、これはあそこの工場で作れると商品を見ただけでパッとわかります。あとは現地社員に『こう作って』と指示するだけ」
香港、韓国、タイなどにいる現地駐在員は、旅先で自らスカウトした人材ばかり。
「『石田さん、なんで海外ばっかりいってるの』って聞かれるんですが、僕の場合、『いい人を探しに行くんだ』と言っています。現地で出会ったり紹介してもらったりした人で、日本語ができて真面目な人。僕は英語もタイ語も韓国語もできないけど、日本語がわかれば一緒に商売ができるから。だからコロナ前は毎月会いに行っていました。それもいきなり行って連絡します。『タイにいるんだけど、今から来られる?』『行けます』と答えたら、この人は忠実だな、ウソをつかないなと。仕事ができるできないは二の次なんです。ウソをつく人間では危ないですから。そのために何回も足を運んで、安心して任せられる人を探しているんです」
まったくこだわりがないという商品開発。たが、新製品を考える際のルールは存在するという。
売れる商品の最低条件
「商売というのは不思議なもので、1000万円売れるものは1億円でも売り上げることができる。反対に100万売って赤字のものは1000万売っても赤字なんです。商品開発というと、ほとんどの人が一発当てようとこだわるでしょ。でも、こだわりが強すぎて誰が必要としているかわからないものが世の中には多い。僕が唯一こだわるのは、年齢に関係ないもの、男女兼用という点だけで誰もが必要とするものしか作りません。これが一番楽なんです。この30年、新製品は1月1日に会社で考えるようにしています。元旦は飛行機代が高いから海外に行かないし、特にやることがないので」
自らを、いかに楽をして売るかを考える怠け者だと豪語する。
「知らない人は、僕のことを働き者だと思うかもしれません。ですが、通販をしていて自分は本当に堕落したなと思いますもん。だって商品作ってチラシを撒いて、あとは待っているだけの商売ですから。お客様に頭を下げることもなくお見送りすることもしないんですからね」
そのため、これまで仕事だと思って働いたことはないという。一風変わった通販会社の強みは、こうした独自路線をひたすら歩んでいるところにありそうだ。