有森隆
著者のコラム一覧
有森隆経済ジャーナリスト

早稲田大学文学部卒。30年間全国紙で経済記者を務めた。経済・産業界での豊富な人脈を生かし、経済事件などをテーマに精力的な取材・執筆活動を続けている。著書は「企業舎弟闇の抗争」(講談社+α文庫)、「ネットバブル」「日本企業モラルハザード史」(以上、文春新書)、「住友銀行暗黒史」「日産独裁経営と権力抗争の末路」(以上、さくら舎)、「プロ経営者の時代」(千倉書房)など多数。

「HIS」がハウステンボスを売却へ…50億円と共に消えたカジノ誘致の夢

公開日: 更新日:

 旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)は、傘下のテーマパークであるハウステンボス(HTB、長崎県佐世保市)を香港の投資会社などに売却する。売却額は数百億円程度。ハウステンボスは売却後も営業を続ける。

 ハウステンボスは1992年に開業し、今年3月に開業30周年を迎えた。だが、バブル崩壊で入場者が伸び悩み、2003年に経営破綻。野村ホールディングス傘下の投資会社の支援を経て、10年にHISと九州電力やJR九州など地元企業5社が買収した。

 HISの創業者、澤田秀雄氏(71)は、ハウステンボス内に住み込み、ユニークな企画を次々と打ち出して再建を果たして“救世主”と呼ばれた。HTBの社長になった澤田氏は「カジノに挑戦したい」と発言。再建策の中心にカジノを据えた。カジノ誘致に成功した場合、「来場者が年間100万~200万人増加する」と試算した。

 澤田氏が掲げたIR(カジノを含む統合型リゾート施設)誘致の目玉は、世界初となる海中カジノだった。海面下の壁を大型の強化ガラスで造った特別施設。海中を泳ぐ魚をながめながらゲームを楽しむことができる――との触れ込みだった。建設場所はHTBが面している大村湾を想定していた。

■50億円の詐欺被害でIR計画が頓挫

 しかし、この計画は挫折する。澤田氏が50億円の詐欺被害に遭ったからだ。

 18年2月、金(ゴールド)に裏付けられた電子通貨、テンボスコインを企画した際、金(ゴールド)の調達を一手に引き受け、澤田氏が高く評価していた金取引会社の社長である石川雄太氏が、こんな話を持ちかけられた。

「リクルート創業者の江副浩正氏が安定株主対策として預けた株式が財務省に大量に保管されている。財務省とリクルートの承諾があれば、ワンロット50億円といった大口に限り、市価の1割引で手に入る」

 瞬時に5億円の利益がもたらされる、というオイシイ話である。

 冷静に考えれば眉唾モノだと直ぐに気付くはずだ。よほど“詐欺師”たちのセールストークがうまかったのか、石川社長はワンロットの購入を決め、澤田氏に相談。50億円の資金提供を受けた。

 当然のことだが、リクルート株式が購入できるはずもなく、50億円は闇に消えてしまった。

 澤田氏は、自分が保有するHIS株120万株を、およそ53億円で売却。損失を穴埋めした。その後、事件の責任を取り、19年5月、HTB社長を引責辞任。カジノ誘致の熱情は、うたかたの夢と消えた。

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