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高橋乗宣
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高橋乗宣エコノミスト

1940年広島生まれ。崇徳学園高から東京教育大(現・筑波大)に進学。1970年、同大大学院博士課程を修了。大学講師を経て、73年に三菱総合研究所に入社。主席研究員、参与、研究理事など景気予測チームの主査を長く務める。バブル崩壊後の長期デフレを的確に言い当てるなど、景気予測の実績は多数。三菱総研顧問となった2000年より明海大学大学院教授。01年から崇徳学園理事長。05年から10年まで相愛大学学長を務めた。

ナチスの宣伝を想起させる驕れる首相の賃上げ圧力

 あり得ない光景だった。16日に首相官邸で開かれた政労使会議の場で、安倍首相は「来年春の賃上げについて最大限の努力を図っていただきたい」と経団連の榊原定征会長に要請していた。

 榊原会長は「最大限努力する」と応じたが、社員の賃金は本来、民間企業が自主的に決めるべきものだ。その賃金が労働市場の需給に応じて決まることは、経済学のイロハのイである。すなわち、労働需給が逼迫してくると賃金は上がり、逆にだぶつけば下がる。

 こうした経済原理を踏みにじって、時の政権トップが民間企業の給与水準にまで口を挟み、「賃金を上げろ」と迫る姿は異常だ。ロコツな政治介入を慎むことこそ権力者に求められる姿で、国家権力を背景にした財界トップへの賃上げ圧力は論外である。

 そもそも経団連の参加企業には円安のメリットを享受し、輸出で収益を上げた大企業が多い。わざわざ政治介入という禁じ手を行使しなくても、ボーナスなどの労働支給を上げて当然の立場だ。安倍首相がメディアの前で経団連会長と会って、賃上げを求めたのは自己満足に過ぎない。「自分が賃上げを実現させた」と世間にアピールし、国民に「労働者の味方」と思わせたいだけだ。ヒトラーを「国民の救世主」に祭り上げたナチスのプロパガンダを彷彿とさせる。危うい政治パフォーマンスである。

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