漫画家・小林よしのりさん「この閉塞感を打破するには、愛子天皇の道しかない」
単なる「血の器」としか思っていない
──ここまで男系にこだわるのは時代錯誤です。
結局、男系固執派は天皇や皇族を人間として見ていない。単なる「血の器」としか思っていないんだ。“万世一系の男系の血”を受け継ぐ器を信奉しているだけ。男の血に特有の「Y染色体」が重要とか、キモイ発言は不敬そのもの。皇位の血統主義は部落差別にも通じ、ありもしない“血のケガレ”を認めたも同然。わしもゴー宣「差別論スペシャル」で部落解放同盟の幹部と討論したが、血の問題は差別と切り離せません。
──旧宮家系男子に限る養子案は憲法14条が禁じる「門地の差別」として、違憲訴訟を起こすと宣言されました。
今も弁護士と作戦を練っている。日本には法の違憲性を審査する憲法裁判所がなく、養子案による「直接の被害」を示すのは難しいが、10月24日の施行に合わせて必ず提訴します。門前払いになろうと、わしは闘う。
──何が先生をそこまで突き動かすのですか。
だって“男系継承は神武以来の伝統”なんて全部デマ! 古代の「大王」、後の天皇は合議制で決まり、男系・女系の観念すらなかったのは新書1冊読めば分かる知識。高市の地元「飛鳥・藤原の宮都」が世界遺産になったが、あの時代「日本」の国号を定め、「天皇」の称号を定着させたのは女性の持統天皇です。それだけの方が「中継ぎ」なの? 唐の律令制の導入時も、日本独自に「女帝の子もまた同じ」と加え、男系の子同様に親王とした。男系も女系も容認する「双系」の鷹揚さが日本の伝統。男系男子による皇位継承は明治22(1889)年制定の旧皇室典範で初めて明文化され、およそ140年の歴史しかない。男尊女卑に基づく悪習だよ。
──史実の無視は歴史修正主義です。秋篠宮親王も「世の中は進歩が大事」と発言しています。
高市政権は皇族の意向を無視し、与党議員は国会で「男系継承は2600年以上の伝統」とデマをまき散らす。皇紀の不自然さは戦前の皇国史観を代表する学者・平泉澄でさえ否定したほど。今や戦前回帰を上回るウルトラ・カルト集団だね。
──そんな政権を支えるのが自称・保守の「ネトウヨ」です。1998年のベストセラー「戦争論」がネトウヨ増殖の土壌になったようにも思えます。
当時は自虐史観が強く、祖国のために闘った人々を“侵略者”と蔑む風潮を正そうとしたけど、意図せず極端な右傾化を生んでしまった責任は否定しません。ただ、本来「保守」の要諦はバランス感覚。時代という一本の綱の上を右にも左にも偏らず、バランス棒を操り歩んでいく。その棒こそが「伝統」とするのが、あるべき姿です。船も極端に傾けば転覆します。
──とかく日本は極端な風潮に流されがちです。
エセ保守は「今だけ」の発想で未来を予測できない。結婚後も女性皇族が皇室に残れるようにしたとはいえ、「夫や子は一般国民」という荒唐無稽な立て付けで身分差家族を迫る。その暮らしを想像してごらんよ。一般国民の子供の服を買うのに皇族費を出すにもいかず、父さんに金をもらえと言わせるの? 結婚後の女性皇族は住民基本台帳に載せるが、皇族の戸籍にあたる皇統譜には名字がない。夫とは別姓? エセ保守は猛反対じゃないか。本気で女性皇族を残すつもりはないんだ。
──むしろギャグの宝庫のような制度です。
愛子天皇排除により皇室は今の姿を失う。今回の改正内容を見直す30年後には現在の女性皇族が去り、養子の一般男子に入れ替わっていく。そんな皇室なら誰も敬意を払わなくなるが、この「皇室破壊」こそ高市ら改憲派の狙い。平和憲法の実践者であり、不戦を祈り続ける上皇や天皇を心の底では嫌悪しとる。その精神を受け継ぐ愛子天皇を潰して皇室から「護憲の象徴」を排除したがっているんだよ。
■いずれ国民大会で武道館を超満員に
──逆に天皇制打倒が党是だった共産党がすっかり愛子天皇容認の急先鋒とは隔世の感がします。
わしも今じゃ「サヨク」呼ばわりだからね。時代は常に激しく移ろうけど、国民が皇室に寄せる敬意の本質は不変です。人柄やたたずまいであり、決して「血」なんかじゃない。だから「国民と苦楽を共にする」姿勢を身につけられている愛子さまこそ、憲法1条がうたう「国民統合の象徴」にふさわしい。少子化が進み、女性の生き方や地位が問われる今、社会の意識が変わり、将来が明るくなる。この国の閉塞感を打破するには、愛子天皇への道しかない。
──パンドラの箱に残った「希望」かもしれません。今後の活動は?
まず愛子さまが皇太子となる「立太子の礼」までユーチューブなどで発信を強め、いずれ「愛子天皇を志す」国民大会で武道館を超満員にしたい。あの日本会議も武道館で集会を開いているが、アイツらに勝つ勢力をつくる。わしだって「新しい歴史教科書をつくる会」の頃、東京・厚生年金会館を満員にした。ロックスターでもないのにね。大勢の人が自虐史観にうんざりしていた証しだけど、愛子天皇を熱望する人の数は比べものにならんよ。最後にごーまんかましてよかですか? わしは死んでも愛子天皇を諦めんぞ!
(聞き手=今泉恵孝/日刊ゲンダイ)
▽小林よしのり(こばやし・よしのり) 1953年福岡県生まれ。福岡大在学中の76年、「東大一直線」でデビュー。89年に「おぼっちゃまくん」で小学館漫画賞を受賞。92年開始の「ゴーマニズム宣言」が思想漫画として注目され、98年のスペシャル版「戦争論」は90万部超のベストセラーに。現在も「週刊SPA!」で連載中。他にも動画配信やWebマガジンなどで精力的に情報を発信している。



















