高橋善正氏も称賛「ドラマ不足の球界を星野監督が盛り上げた」
ちょっと極端なケースを例に出したが、最近のプロ野球は常識にとらわれすぎてドラマがない。先発投手は中6日をあけなければ投げないし、最後は決まった抑えが出てくる。見ているファンの想像を超えたシーンがめっきり減った。
阪神の金本が左手首を骨折し、右手一本で痛烈なヒットを打ったことがあった。あれだって打席に立たせた岡田監督をとやかく言う人もいるが、ファンの度肝を抜く一打は伝説になっている。
東北に悲劇が襲ったのは2011年3月11日。星野監督が楽天監督に就任した1年目だった。楽天ナインは大地震と想像を絶する大津波の爪痕を目の当たりにし、声も出なかったという。各地で義援金を集め、被災地を慰問。他の11球団とはまったく違う形で被災地、被災者の人たちと接してきた。
楽天の快進撃が被災した人たちに与えた「勇気」は微々たるものかもしれない。だが、私が思うに、あの悪夢のような大震災がなければ、今オフにメジャー移籍が濃厚でなければ、星野監督はあそこまで田中の起用にこだわらなかったと思う。
東北のファンは、みんな田中のカラダを心配しつつも、「最後はマー君で日本一」と願っていたはずだ。酷使の批判を承知の上で星野監督は決断したのではないか。
(野球評論家・高橋善正)