汚名返上の力走 男子400m障害はケロン・クレメントが金
勝負弱いベテランが悲願の金メダルだ。
リオ五輪陸上男子400メートルハードルで、個人として初めての五輪金メダルを獲得したクレメント(30=米国)。猛追するツムティ(24=ケニア)を100分の5秒差でかわし47秒73でゴール。ロンドン五輪8位の雪辱を果たした。
トリニダード・トバゴのポートオブスペイン生まれ。3人きょうだいの末っ子で、母親はシングルマザーだ。生まれて3日目に、胃の出口の筋肉が硬くなり、ミルクなどが通りにくくなる「幽門狭窄症」と診断される。成功確率は五分五分の手術で乗り越え、5歳で陸上を始めた。年上の経験豊富な相手と走って2位と健闘しても、「1位じゃなきゃイヤだ」とだだをこねる負けず嫌い。13歳の時に移住した米国でその才能が開花した。
04年に米国の市民権を取ると、世界ジュニア選手権の400メートルハードルで48秒51の大会新で金メダル。05年には室内の400メートルで44秒57の室内世界新記録をマーク。マイケル・ジョンソンの記録を10年ぶりに更新、400メートルハードルでは07年、09年の世界選手権を連覇した。
しかし、五輪では優勝に縁がなく、初出場となった北京の1600メートルリレーの金メダルのみ。北京の個人はアンジェロ・テーラー(米国)に競り負け銀。大きな期待を背負って挑んだロンドンでは8位に沈んだ。「大舞台に弱い」というレッテルを貼られたまま臨んだリオで汚名を返上した。