著者のコラム一覧
武田薫スポーツライター

1950年、宮城県仙台市出身。74年に報知新聞社に入社し、野球、陸上、テニスを担当、85年からフリー。著書に「オリンピック全大会」「サーブ&ボレーはなぜ消えたのか」「マラソンと日本人」など。

大坂なおみ“天然の無邪気さ”は過当競争の外だから保たれた

公開日: 更新日:

 全米決勝は、セリーナ・ウィリアムズが警告を3度受ける異様な幕切れだった。優勝セレモニーでの激しいブーイングが整然とした拍手に変わったのは、大坂なおみが司会者の質問を遮って、こう切り出したときだ。

「皆さんが彼女(セリーナ)を応援していたのに、こんな結果になってごめんなさい」

 泣き顔でしゃくり上げペコリと頭を下げた。

 勝者が敗者に対し「ソーリー」と言うことは、これまでもあった。ナダルがフェデラーに言ったこともある。だが、異様な状況下で20歳の新人が口にした率直な言葉は新鮮で、我を忘れて興奮する大人たちをたしなめるようだった。

 テニスでは相手のミスも得点になる。言葉を換えれば、相手の失敗が己の得になるため、以前は相手のミスに対してスタンドは拍手しなかった。最近はダブルフォールトにさえ拍手が起きる。ゲームが高度化し、ミスが「ミスを導いた力」、ダブルフォールトは「精神戦の勝利」と解釈が変わり、競技はギスギスしてきたのだ。

 全米オープンは今年がオープン化して50年目だった。最初の優勝賞金は男子1万4000ドル(当時504万円)に対し女子6000ドル。ビリー・ジーン・キングらの運動で1973年から男女同額になり、今年は380万ドル(約4億2580万円)に跳ね上がった

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    冷静になれば危うさばかり…高市バブルの化けの皮がもう剥がれてきた

  2. 2

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  3. 3

    大関取り安青錦の出世街道に立ちはだかる「体重のカベ」…幕内の平均体重より-10kg

  4. 4

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  5. 5

    維新・藤田共同代表に自民党から「辞任圧力」…還流疑惑対応に加え“名刺さらし”で複雑化

  1. 6

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  2. 7

    小野田紀美経済安保相の地元を週刊新潮が嗅ぎ回ったのは至極当然のこと

  3. 8

    前田健太は巨人入りが最有力か…古巣広島は早期撤退、「夫人の意向」と「本拠地の相性」がカギ

  4. 9

    「しんぶん赤旗」と橋下徹氏がタッグを組んだ“維新叩き”に自民党が喜ぶ構図

  5. 10

    歪んだ「NHK愛」を育んだ生い立ち…天下のNHKに就職→自慢のキャリア強制終了で逆恨み