「スカウトは本音を言わなきゃ」部長の気遣いに救われた

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 ドラフトが1カ月後に迫り、各球団とも1位指名を誰にするか、煮詰めているころだと思う。

 高校生の佐々木か奥川か、大学生の森下か、ウチはパソコンおたくのエラいさんが最終決定するだろうが、3人のうちの誰にいっても競合は必至。問題は、クジで外れた場合の1位指名や、2位以下をどうするかだ。

 この前のスカウト会議で、オレは自分が担当する地区の高校生野手を思い切り売り込んだ。ゆくゆくは、球界を代表するスラッガーに化ける要素がある。ぜひ、外れ1位か、2位で指名すべきだってね。

 エラいさんは「数字がどうも……」なんて渋ってたけど、お構いなし。自分が担当したいまの4番打者が高校生だったときの雰囲気にソックリだって我が物顔で言ったんだ。

 で、会議が終わった直後のこと。後輩のスカウトが「よく、あんなこと言えますね」と声を掛けてきた。

 スカウトとしては中堅どころだが、ここ4、5年は会議で推した選手がからっきし。獲得した選手は働かないわ、蹴飛ばした選手は他球団で芽を出すわで散々。すっかり自信を失ったのか、最近は会議でも静かにしている。

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