著者のコラム一覧
織田淳太郎スポーツライター

1957年生まれ、北海道出身。スポーツライターとしてノンフィクション、小説の両分野で幅広く活躍。審判を主人公にした小説「ジャッジメント」のほか、「トレーナー」「捕手論」「コーチ論」「巨人軍に葬られた男たち」「もう一度あるきたい」「論争・長嶋茂雄」などの著書がある。

同僚選手が“高井ノート”を懇願「俺のベンツと引き換えに」

公開日: 更新日:

 その頃、不振に悩む同僚選手のひとりが、高井さんに相談を持ちかけてきた。お目当ては「高井ノート」である。

「おれのベンツと引き換えに、あのノートを譲ってくれないか?」

「悪いが」と高井さんは迷うことなく言葉を返していた。

「あのノートは金やモノやない。わしの宝物や。それはできんよ」

 高井さんを他チームはどう見ていたのか。捕手として南海日本ハムロッテと渡り歩いた高橋博士さんが、こう口にしたことがある。

「私がキャッチャーとして阪急戦で気をつけたひとつは、いかに高井さんに出番を与えないかということでした。彼の読みは深い。初球からやみくもに振り回してくるタイプではなく、冷静に配球を観察してくる。特に両サイドには強かったですよ。高めは割と空振りしていたけど、それでもこれといった穴はなかった。だから、ここぞという場面で彼の名前が告げられたときは、『ああ、またか……』と嫌な気分になったものです。スタメンで出てもらったほうが、よっぽど気が楽だった」 (つづく)

▽たかい・やすひろ 1945年2月、愛媛県今治市出身。64年に阪急に入団し、主に代打・DHとして通算1135試合、665安打、130本塁打、446打点、打率・269。通算代打本塁打27本は、いまだ破られない世界記録。今年12月13日、腎不全で逝去。

【連載】急逝 高井保弘「世界一の代打屋」と呼ばれて

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 野球のアクセスランキング

  1. 1

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  3. 3

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  4. 4

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  5. 5

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  1. 6

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  2. 7

    査定担当から浴びせられた辛辣な低評価の数々…球団はオレを必要としているのかと疑念を抱くようになった

  3. 8

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  4. 9

    侍Jと大谷翔平がWBCで直面するMLBからの嫌がらせ…過去何度も味わった手段選ばぬヤリ口に要警戒

  5. 10

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  2. 2

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  3. 3

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  4. 4

    片山さつき財務相の居直り開催を逆手に…高市首相「大臣規範」見直しで“パーティー解禁”の支離滅裂

  5. 5

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  1. 6

    小林薫&玉置浩二による唯一無二のハーモニー

  2. 7

    森田望智は苦節15年の苦労人 “ワキ毛の女王”経てブレーク…アラサーで「朝ドラ女優」抜擢のワケ

  3. 8

    臨時国会きょう閉会…維新「改革のセンターピン」定数削減頓挫、連立の“絶対条件”総崩れで手柄ゼロ

  4. 9

    阪神・佐藤輝明をドジャースが「囲い込み」か…山本由伸や朗希と関係深い広告代理店の影も見え隠れ

  5. 10

    阪神・才木浩人が今オフメジャー行きに球団「NO」で…佐藤輝明の来オフ米挑戦に大きな暗雲