著者のコラム一覧
織田淳太郎スポーツライター

1957年生まれ、北海道出身。スポーツライターとしてノンフィクション、小説の両分野で幅広く活躍。審判を主人公にした小説「ジャッジメント」のほか、「トレーナー」「捕手論」「コーチ論」「巨人軍に葬られた男たち」「もう一度あるきたい」「論争・長嶋茂雄」などの著書がある。

同僚選手が“高井ノート”を懇願「俺のベンツと引き換えに」

公開日: 更新日:

 高井さんは代打を告げられてベンチから出てくるときは、2本のバットをぶら下げて、悠然と打席に向かう。それから捕手の後ろでバットをブン! と一振り。威圧感を与えるためだった。

「気持ちの上ではいつも4番バッターやった。4番がベンチにいるだけや、と(笑い)。登場するときは、ファンにヤジられたこともあったけど、わしがすごいバッターだから騒ぎ立てるんやなと思い込んどったよ」

 高井さんが一躍クローズアップされたのは、1974年のシーズンだった。まず4月17日の日本ハム戦、3―2とリードされた九回裏、1死走者二塁の場面に登場し、逆転サヨナラ本塁打をバックスクリーンに叩き込む。6月28日の太平洋戦では、14本目の代打本塁打を記録し、中西太と穴吹義雄の持つ日本記録を塗り替えた。さらに、代打要員としては麻生実男(大洋)以来、12年ぶりとなるオールスターゲームに出場。その初戦で球宴史上初となる代打逆転サヨナラ本塁打を左中間スタンドに叩き込んだ。

 翌75年8月のロッテ戦では、元パイレーツのジェリー・リンチが持つ通算代打本塁打の世界記録を凌駕する19本目をマーク。高井さんは名実ともに「世界一の代打屋」に躍り出た。

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