長嶋監督と松井が素振り練習でつくり上げた「仮想ライン」
寮生だった松井秀喜は、ナイター後に帰寮すると、食事の後、30分~1時間ほど素振りをするのが日課だった。
二軍の打撃コーチだった私も当時は寮に住み込んでいた。2階が一軍部屋で松井は私の隣の隣の部屋だった。私はヤクザものの映画が好きで、休前日などにレンタルDVDを部屋で観賞していた。深夜、寮内の自動販売機にジュースを買いに行くと、松井はいつも黙々とバットを振っていた。寝るのは深夜2時半から3時ごろだと聞いた。それから7、8時間ほど睡眠を取り、昼すぎに東京ドームに入っていた。
長嶋監督はこの頃、松井秀喜の「4番1000日計画」を掲げ、連日マンツーマン指導を行っていた。
遠征先の場合、選手は11時前に球団が借りているホテルの大広間でスイングをしてから昼食を取る。その時、松井は長嶋監督のところで個人レッスンを受けていた。5分の時も30分の時もある。その後、ミーティングをしてからバスで球場入りするという流れだった。私は松井に長嶋監督からどんなアドバイスをされたか、内容を聞くようにしていた。