著者のコラム一覧
佐々木裕介フットボールツーリズム アドバイザー

1977年生まれ、東京都世田谷区出身。旅行事業を営みながらフリーランスライターとしてアジアのフットボールシーンを中心に執筆活動を行う。「フットボール求道人」を自称。

東京ヴェルディの変革「総合型スポーツクラブ」に存在意義

公開日: 更新日:

 日刊ゲンダイDIGITALの読者の皆さんは<東京ヴェルディ>と聞いて何を連想するだろうか? J初代王者、カズ、ラモス、歌って踊れるスター軍団……どれもこれもが、ヴェルディ川崎時代の回想的レガシーばかりではなかろうか。それもそのはず、かつて日本サッカーを牽引してきた名門クラブは今、J2で12年目のシーズンを戦っている。

 2019年シーズン途中から、華やかだった時代を知る永井秀樹がタクトを振って奮闘しているが、スカッとしないシーズンが続いていることは否めない。そんな古豪が変革へと動いた。

 19年1月、クラブ創立50周年記念事業発表会の席上で<総合型スポーツクラブ>として歩んでいくことを高らかに宣言したのだ。

 ホームを東京に越してきたのが01年、青赤色のライバルとの差は広がるばかり。首都クラブとして生き残っていくため、東京のスポーツシーンを総合的に網羅する形で差別化を図った格好だ。

 男女共に頂点を取った歴史を持つサッカーに始まって野球バレーボールといった球技にチアダンス、セパタクロー、スケートボード、eスポーツと実に16ものカテゴリーを保有するが、長らくフットボールシーンを追い掛けている身としては、フットサルビーチサッカーには強烈な興味を持っていた。

■ヴェルディらしい派手やかな球さばきではない

 20年に設立されたばかりのフットサル・トップチーム「東京ヴェルディボレイロス」。総監督を務めるのが日本フットサル界のレジェンド、相根澄である。全日本フットサル選手権東京都予選決勝大会へ勝ち上がってきたと聞き、彼らの試合を取材した。

 相手はF1リーグ所属「フウガドールすみだ」のセカンドチーム。

 スターティングセットには、GK石渡良太やFP山田ラファエルユウゴといった名の知れた元Fリーガーが並び、チームを鼓舞し続け、格上相手にも臆することなく立ち向かい、接戦を演じてみせた。最後は退場者を出し、数的不利も重なって力尽きたが、フットサルの魅力のひとつでもある、対人の激しい攻防戦を目の当りにして心が熱く揺れた。

 正直、疑問もあった。選手時代には海外リーグでもプレー、日本フットサル界を盛り上げてきたパイオニアが、フットサルピラミッド式に数えて実質9部相当に当たるチームの立ち上げをなぜ引き受けたのか、である。

「地元でプレー(京都紫光クラブ/J京都サンガの前身)していた時に、多くの読売クラブでプレーされていた先輩方がいらっしゃって。そこで技術、ズルさ、負けない気持ちを学ばせていただいたんです。それが私が世界で戦っていても、何が起きても動じなくやれた糧になっていました。ご縁があるんだなぁ~と」

「ヨーロッパや南米では当たり前にある仕組み(総合型スポーツクラブ)を目指していくクラブビジョンに共感したんです。そこで名のあるヴェルディからフットサル部門を立ち上げるというお話をいただいたので、喜んで力になれればとの思いからです」

「フットサルの技術をサッカーに、という点は私の中でずっと思ってきたことなんです。将来的には、フットサルを学んだ子たちが、またサッカーへチャレンジしていくような仕組みが、同じクラブの中で出来たら良いなとも。楽しみに思っていますよ」

 そう語ってくれた相根をサポートするのは前田喜史、稲葉洸太郎といった日本フットサル史で一時代を築いた元日本代表戦士達だ。Fリーグ所属チームと何ら遜色のない豪華スタッフ陣が今後どんな集団を作っていくのか実に興味深い。フットサル界注目の存在だろう。

キングが束ねる国内屈指の強豪~ビーチサッカー

 JR立川駅から多摩都市モノレールで2駅目・立飛駅前に広がる砂浜が<タチヒビーチ>だ。

 ビーチと言えども海はないが、一歩足を踏み入れればノリの良いアップテンポなBGMが流れ、堪らない炭火BBQの匂いが鼻をくすぐる。南国ビーチさながらの風景が広がる場所をホームピッチとして活動するのが、東京ヴェルディBSである。多くの日本代表選手が在籍するチームは02年2月、ロシア・モスクワで行われた世界クラブ選手権へも出場している。

 そして、このチームを語る上で外せない存在がいる。茂怜羅オズだ。19年、日本代表選手として出場したFIFAビーチサッカーワールドカップ・パラグアイ大会でMVPを受賞(チームはベスト4)。ビーチサッカーの世界統括組織・ビーチサッカーワールドワイドが毎年選出する年間ベストプレイヤー5を過去5度も受賞している。ビーチサッカー界で彼を知らない者はいないほどのスーパースターなのだ。

 関東ビーチサッカーリーグ最終節、ライバル相手に繰り広げた激戦(対レーヴェ横浜=6-6のドロー決着)後、彼はこう話してくれた。

「今日も多くのサッカーファンが応援に来てくれました。ブラジルはもちろんロシアやスイスなどビーチサッカーが人気の国では、サッカーやフットサルのチームも保有するスポーツクラブは多いんです。ファンが今日はフットサル、明日はビーチサッカーを観に行くなんてことは、ごく普通の形なんです。ヴェルディのように多くのJリーグクラブが、フットサルやビーチサッカーのチームを持ってもっと競技間で協力し合っていけば、日本のフットボールファミリーは、世界でさらに強くなっていくと思いますよ」

 10分程の砂上インタビューが終わると、彼は近くにいた女性を紹介してくれた。名前は及川栞、ヴェルディホッケーチームに所属する、彼女もまた日本代表選手だ。ファン同様、緑の仲間の応援に駆け付けたという。そんな彼女のファミリー意識に和みながら大久保嘉人藤田譲瑠チマがコートサイドで、いつも自らを応援してくれるファンと一緒にビーチサッカーやフットサルを観戦する姿を想像している自分がいた。いくつもの競技が肩を並べ合うスポーツクラブとして、実に夢のある話ではなかろうか。

■総合型スポーツクラブが提起する日本スポーツの未来

 フットサルも、ビーチサッカーも、今はまだ仕事を掛け持ちするセミプロ選手が多い。しかし、あのオン・ザ・ピッチでの実直さとオフ・ザ・ピッチでのアットホームさが、どこか日本リーグ時代の読売クラブの面々の姿とダブって見え、当時の懐かしさが蘇ってきたのだった。

 東京ヴェルディが総合型クラブの在り方、また存在意義に一石を投じられる価値あるクラブへ発展することを多いに期待したい。この令和の時代にひとつの形として、競技レベル向上だけでない、日本の明るい未来のために、スポーツクラブが担う価値を見出してくれることを強く願っている。=文中敬称略

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