著者のコラム一覧
佐々木裕介フットボールツーリズム アドバイザー

1977年生まれ、東京都世田谷区出身。旅行事業を営みながらフリーランスライターとしてアジアのフットボールシーンを中心に執筆活動を行う。「フットボール求道人」を自称。

楽しみだった横浜のタイ人ダービー不成立にアライ・ワー!

公開日: 更新日:

 筆者はタイが好きである。あのサバーイサバーイ的空気の下、バービアで可愛い彼女から微笑まれたものならば、タイマッサージを受けずして心身共にビシッと整うものだ。

 しかし……コロナ禍真っ只中の地球上、国境を閉ざしたままの国が多い。あんなにも身近だったタイだって、そう簡単には行けなくなってしまっている。アライ・ワー!!(なんなのー! 的なタイ語)

 先週末にはスペインリーグが開幕(9月12日~)。ビジャレアルーウエスカ戦でリーグ初となる『日本人対決』(久保建英/岡崎慎司)が実現し視聴した。また同週のベルギーリーグ第5節、ヘンクーベールスホット戦(伊東純也/鈴木武蔵)も然り。日本人としてのアイデンティティーを多いに刺激されたものだ。

 ネットインフラの進化と日本人選手の技術向上のお陰で、自宅にいながらにして欧州式日本人ダービーを簡単に観戦できてしまう今日この頃。いやはや、すごい時代になったものである。

 しかし、だ。やっぱりフッチボールはスタジアムで観たい。久しぶりにJリーグの日程を調べてみると、数日後に横浜F・マリノスと清水エスパルスが相まみえることを知る。しかも『タイ人対決』ではないか。タイ人でもないのに無性に掻き立てられた筆者は、すぐさまクラブ広報へ連絡を取り、取材許可をもらったのだった。

■そうだ、タイ飯を喰らってから行こう

 試合(9月16日)当日、遅い夕方ランチとでも言おうか、スタジアムへ向かう前に寄り道を。以前、横浜在住タイ人の知人に連れて来てもらったことのあるタイ料理屋「インムアロイ」へ。

 ここ若葉町にあるタイ人街では人気の名店、味もさることながら、店内は東南アジア独特の匂いを感じられる。また、通称・親不孝通り(曙町)と日ノ出町に挟まれた場所にあり、大岡川がタイ運河にも見え、一帯はどことなくバンコクの夜街を彷彿とさせる雰囲気があって実に心が踊ってしまった。

 いただいたのは、ガパオ・ムーサップ・カイダーオ(豚挽肉のバジル炒め飯・目玉焼きのせ)。久しぶりのタイの味に刺激され、店内の冷蔵庫に見えるキンキンに冷えたビールに誘惑されそうになるも仕事前だと言い聞かせて自重したが、代わりに見慣れた像さんマークが描かれた330ミリリットル缶をお土産に持ち帰ることにした。

■タイ代表二人の共演を楽しみに……

 日産スタジアムへ到着。前回ここを訪れたのは2019年12月7日。Jリーグ最高入場者数を記録し、リーグ優勝を掛けて行われた、あの天王山だった。雪がちらつき、寒い日だったことを覚えているが、あれから9カ月が過ぎ、秋の肌寒さすら感じる。

 あの日、先制ミドルを叩き込んで試合を動かした横浜のDFティーラトン・ブンマタン。

 しかし、今季は昨季ほどのインパクトを示せていないように思う。同郷の先輩との対戦でどんなプレーを観せてくれるのか、と楽しみに乗り込んだのだが、メンバー表に彼の名前はなかった。前節・C大阪戦から先発7名を変更した横浜、ティーラトンもそのうちのひとりに。

 これは、アンジェ(ポステコグルー監督)とピーター(クラモフスキー監督)の師弟対決や、マルコス・ジュニオールや仲川輝人のゴールパフォーマンスよりも楽しみにしていた『タイ人ダービー』が不成立になったことを意味するもの。キックオフ間際に振り出した激しいスコールは、本国タイでライブ放送にかじりついていただろうタイ国民と筆者の止めどない涙そのものだった。

必死になる神様だって悪くはないのだ

 かたや清水FWティーラシン・デーンダーは前節・鹿島戦で挙げたゴールが功を奏したのか、久しぶりの先発出場。4-2-3-1の布陣で1トップを任されたが、仲間との連携は皆無に等しく、前線で孤立していた感は否めなかった。

 しかし、である。いつも飄々とプレーする“タイの神様”が、必死さを顕にして走っている。言葉では伝え難いだろう、自らの意思を全身を使ったジェスチャーで表しているではないか。正直、あそこまで捨て身なティーラシンは初めて見た気がしてならない。

 前節・鹿島戦後のインタビューで「(ゴールを決めても)うれしい気持ちはなかった。全然、自分がダメ。また毎日の練習でハードワークをするところからやっていく」と話していたことからも、自らのパフォーマンスには決して満足しておらず、歯がゆい心境が続いているのだろう。

 タイと日本。コロナ禍で家族とは離ればなれの生活を過ごしている。産まれたばかりの第二子にも会いたいだろう。家族をより大事にするタイ人故の気兼ねも現状に影響を及ぼしているのかも知れない。

 タイで神様と拝められるスーパースター、2度目のJ挑戦。彼はもがき苦しんでいる。

■さあ~今を楽しみ生きていくーニューノーマルの楽しみ方

 人生は思い通りにはいかないもの。それを悔いても仕方がない。大好きなタイへ行けない、ならば近くでタイを感じようと思い立った企画“エアートリップ・タイランド”も、左利きの主役が欠けたこともあって満足度満点とはいかなかったが、及第点は付けて良いだろう。

 あなたの身近にも好物は転がっている、探してみると意外と楽しめるものが多いのだ。ニューノーマルも悪くはない、と感じた横浜だった。

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