緊急事態宣言拡大でも有観客 スポーツ界の露骨な商業主義

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金儲けための見せ物

 五輪まっしぐらの森組織委会長は、確かにカネのことで頭はいっぱいだ。例えば、2021年元日、日刊スポーツが掲載した森会長のインタビューだ。その中で、開会式の時間短縮についてこう述べている。

「個人的には半分の2時間で良いと思っている。しかしIOC(国際オリンピック委員会)が反対。テレビ局が枠を買っている。時間を短縮すると契約違反で違約金が発生する。それを日本が払ってくれとなる恐れがある。それ以上の議論をすると深みにはまるから、私はそこは引っ込めて、他の案を考えようと言った」

 そう語る森会長もIOCと同様、カネを最優先に動いてきたことは否定できまい。最たるものが、スポンサーシップの問題だ。五輪スポンサーは「1業種1社」が原則だったが、IOCのバッハ会長が掲げる五輪改革に追従する形でこれを撤廃した。

「IOC、組織委の行き過ぎた商業主義がコロナ禍によって一層、あらわになった」とは、スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏。

「バッハ会長が掲げた五輪改革案の『アジェンダ2020』がその象徴です。IOCが五輪大会を存続させるため、金儲けをしやすくするために規制緩和し、何でもアリにした。スポンサーシップの問題に加え、24年パリ五輪ではタヒチでサーフィンを行う分散開催を容認。五輪の根本にある<一つの都市で競技を行い、人々が交流する>という理念をブッ壊した形になった」

 森会長は世界中でコロナが再拡大しているにもかかわらず、大会の開催が「コロナ克服の証しになる」などと言っている。

「選手を無視し、人の命を無視していると言うしかない。森会長や政府は、楽観的というか、軽薄な言葉しか出てこない。世界中でこれだけの感染者、死者が出ているというのに、リアリティーのかけらもない。森会長は『大会の主役はアスリート』と言っているのに、結局のところ、開催ありきでアスリートファーストの理念を無視している。スポーツのことも五輪のことも、根本的なことを分かっていないから、金の話になってしまう。実際問題として、日本国内の五輪内定選手は2割ほどです。おしなべて平等に選ぶべき五輪選手の選考がままならなくても、うやむやにするつもりでしょう。IOCや組織委の商業主義によって、五輪はもはや、<金儲けのための見せ物>というレベルに落ちたと言っても過言ではない」(前出の谷口氏)

 この国のスポーツ、そして五輪は誰のためにあるのだろうか。

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