大相撲5月場所も横綱不在…迫る「空位時代」は長期間必至

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攻防ともに隙なし

 大相撲5月場所が9日から始まる。緊急事態宣言を受け、3日目の11日まで無観客。4日目からは5000人上限での興行となる。そんな場所を制するのは誰になるのか。そして、やがて来たる「横綱不在時代」の相撲はどうなるのか。

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 ◇  ◇  ◇

 3月場所中に鶴竜(現親方)が引退し、もう一人の横綱・白鵬(36)も3月に右ヒザを手術。次の出場は7月場所になるという。

 もはや珍しくも何ともない横綱不在場所。注目はやはり、3月場所で2017年9月場所以来となる大関復帰を決めた照ノ富士(29)だろう。

「スポーツ報知 大相撲ジャーナル」の長山聡編集長は「ダントツとまでは言わないが、優勝争いの本命ですね」と、こう続ける。

「192センチ、177キロの体格でスケール感の大きな相撲を取る。相手の上手を切るのがうまく、立ち合いで左上手を取るのも得意にしている。攻防に隙がなく、相手十分の体勢でも勝てるのが他の力士にはない強みです。後半はバテ気味になるが、それでも左上手を素早く取って一気に寄り切れるスピードもある。ただ、両ヒザに爆弾を抱えているのに時折、ヒザに負担のかかる強引な相撲を取ってしまうのが心配ですね」

 照ノ富士は両ヒザのケガや内臓疾患などで序二段まで落ちながら再入幕を果たした昨年7月場所でいきなり優勝。さらに先場所と、この1年で2回も賜杯を掴んでいる。

朝乃山は照ノ富士に苦手意識

 親方のひとりは「あとは大関が1人、2人、優勝争いに加われば申し分ないのだが」と言う。

「減量して先場所10勝した貴景勝(24)はともかく、問題は朝乃山(27)と正代(29)です。朝乃山は大関昇進後、負傷休場した昨年11月場所以外は4場所すべてで2ケタ勝っているが、安定感には欠ける。先場所は運が良かったものの、序盤に取りこぼす癖がある。終盤、気がついたら優勝争いに加わっていることもあるが、あれは他の力士が負けて自然と星数で並んだだけです。正代は何が何でも上を目指すという気概をイマイチ感じない。ただ、4月の合同稽古ではしっかり腰が下りた立ち合いを見せていたので多少は期待できる」

 長山編集長も、「スケール感の大きい朝乃山に頑張ってほしいが、照ノ富士に5戦5敗と弱すぎる。もっと地力をつけないと」と嘆く。

 朝乃山の照ノ富士に対する苦手意識が顕著に表れたのが先場所。立ち合いでもろ手突きを見せるも、通用しなかった。

 もろ手突きはかつての横綱・曙のように類いまれなリーチとパワーがあれば相手を吹っ飛ばすことができるものの、そもそもが相手の突進を止める「防御」の技。普段やったことのない技を奇策として繰り出した時点で、朝乃山の苦しさがうかがえる。

若貴時代との違い

 白鵬は7月場所で進退を懸ける意向を表明しているが、すでに右ヒザは限界。横綱空位時代の訪れは避けられない。

 横綱空位は過去に2度。1回目は戦前の話で、2回目は1992年5月場所直前に北勝海(現八角理事長)が引退した後だ。この時は93年3月場所で曙が昇進した。

 前出の長山編集長は「今と昔とでは状況がまるで違います」とこう話す。

「前回はいわゆる若貴ブームの真っ最中。貴花田(当時)や曙、小錦、安芸乃島、貴闘力などタレント揃いだった。そうした実力と勢いのある力士たちによって、上が駆逐された結果の横綱空位時代です。91年から92年にかけては、千代の富士、大乃国、旭富士、北勝海とたった1年で4横綱が次々に引退していますからね。ところが今は上が落ちてきただけ。ケガと病気で序二段まで落ちた照ノ富士の大関復帰を許している時点で、いかにタレントがいないかを証明しています。その照ノ富士が一気に昇進できるかどうか。昇進に苦労するようなら、白鵬の後釜は当面出て来ないのではないか」

 さらに長山編集長は続ける。

「照ノ富士は別格にしても、他の3大関は若貴時代なら三役にも入れるかどうか……。ここ数年の新弟子不足の影響がモロに出ています。最盛期は年200人を数えた新弟子も、昨年はその半数以下の71人です。かつて新弟子検査は『173センチ、75キロ』以上でなければ不合格だった。その後、基準値以下なら第2検査で体力測定の結果次第と基準が緩和されて、現在の合格基準は『167センチ、67キロ』以上です(中卒見込みなら165センチ、65キロ)。それだけ基準を緩くしているのに、入門希望者は減る一方ですからね。大相撲は文化とスポーツが融合した稀有な競技。チケットの売れ行きこそ好調ですが、後継者不足に悩んでいるのが現状です」

 それでも横綱がいなければ、せめて大関陣は「次は俺が」と奮起するのではないか。

「期待できないでしょう。2横綱の休場が続いたここ2年ほどは、実質横綱不在時代のようなもの。チャンスにもかかわらず、この2年間で優勝した大関は昨年11月場所の貴景勝だけです。その気になるなら、とっくになっていますよ。白鵬が引退したところで、何かが変わるとは思えません」(前出の親方)

 仮に照ノ富士がダメなら、若手が伸びてくるのを待つしかない。3度目の横綱空位時代は長い冬となりそうだ。

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