コロナ禍で奮闘するJクラブ<上>浦和・名古屋 編

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収益よりファンとの絆を保つことが先決

 2020年度のJクラブ経営開示速報が2021年5月末に発表される予定だが、コロナ禍の昨季は試合中断や観客制限を強いられたため、赤字続出が確実だ。

 すでにJ1・鹿島が3月に9億4500万円の、J1・浦和が6億1200万円の純損失(ともに2021年1月期決算)を計上したことが明らかになるなど、ビッグクラブほど経営ダメージが深刻である。

 J最大の集客力を誇る浦和の場合、入場料収入が2019年の23億円から4億2300万円に激減。

「今季も収束のメドが立たず、入場料収入を柱にしているレッズにとって未曽有の危機的状況なのは変わらない」と立花洋一社長も危機感を募らせる。

 いかにして減収を補うのか。各クラブの「あの手この手」を探った。

■浦和レッズの「入場料収入の見直し」

「結果として10数億円、20億くらいの赤字になってもおかしくなかったが、ここまで挽回できた」と立花社長が言うように、浦和の場合はクラウドファンディングやシーズンチケット分の寄付、グッズの通販拡大などで増収を図った。さらに営業部隊も奮闘。過去3年間で20社の新たなスポンサー企業と契約できたのも大きかった。

 こうした営業努力継続は当然だが、それだけでは赤字脱却は難しい。そこで彼らが考えたのが、入場料収入の見直しである。

 観客制限下で通常のシーズンチケットが販売できない中、まず年間3万円を払って会員更新し、格安チケットを迅速に買える仕組みを作った。

 そうすれば、クラブとしては観客の来場有無に関係なく、最低限の収入を確保できる。熱狂的ファン・サポーターも趣旨を理解し、大半が会員更新をしてくれたという。

■名古屋は「スタジアムでテレワークを」の要望を実現

 だが、今季は入場制限試合が想定以上に多く、立て直しは順調とは言えない。立花社長が「それでも全社員が『ピンチをチャンス』と考えて行動に移すことができている」と前向きに言うように、今はできることをひとつひとつ地道に取り組むしかないだろう。その姿勢は、2020年集客トップのJ1・名古屋も同様だ。

 現在、彼らは保有する約20万人の顧客データを活用。2021年1月に「平日開催に関するアンケート」を実施し、約2万人から回答を得た。「豊田でのキックオフ時間を遅らせてほしい」「名古屋から特急列車を出してほしい」といったさまざまな意見が寄せられた。

 このひとつに「スタジアムでテレワークができたらいい」という要望があり、社内機運が上向いて3月17日の横浜FC戦から具現化するに至った。

 価格設定は、午前8時半~午後4時半の計8時間、屋外の記者席利用で2000円、駐車券付きだと5000円(試合チケット別売)。Wifi完備で試合を観戦しない人も購入可能とした。その結果、1回目は52人が利用。それから3回実施したが、30人以上はリピーターがついているという。

「ただ、販売中の92席が完売したとしても、採算が取れるかどうかは微妙です。スタッフの労力の問題もあります」とマーケティング部ファンデベロップメントグループの遠藤友貴彦グループリーダーは課題を口にした。今は収益よりも、ファンとの絆を保つことが先決という考えなのだ。

■コロナ終息後に客が戻ってくるか

「大幅減の入場料収入を補う稼ぎ頭をすぐに見つけるのは難しい。やはり重要なのは、コロナ終息後にお客さんに以前のレベルまで戻ってきていただくこと。それを視野に入れ、コストをかけずに可能な施策を考えるのが重要なんです」と首都圏のあるクラブ関係者も強調する。

 たとえば、5月2日の大阪ダービーで無観客を強いられたセレッソ大阪が展開した「長居をピンクに染めなあかん!」プロジェクトなどは、毎回できるものではない。

 これはビニールポンチョやTシャツなどが含まれた企画チケットを販売する形。1000万円超を稼ぎ出したというが、ダービーというスペシャルな試合だからこそ、成功したのではないだろうか。

 やはり今は「目先のことからコツコツとやっていく」という原点に立ち返るしかない。

 J2・松本山雅が「スマイル山雅農業プロジェクト」を展開し、地域とともに農業問題の解決に当たったり、J3・福島ユナイテッドが福島県産品の販路拡大事業に乗り出したりしているが、地域性を生かした活動に着手すること。それがコロナ危機を乗り切る一助になるはずだ。(この項つづく)

▽元川悦子(もとかわえつこ)1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U-22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

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