著者のコラム一覧
春日良一五輪アナリスト

長野県出身。上智大学哲学科卒。1978年に日本体育協会に入る。89年に新生JOCに移り、IOC渉外担当に。90年長野五輪招致委員会に出向、招致活動に関わる。95年にJOCを退職。スポーツコンサルティング会社を設立し、代表に。98年から五輪批評「スポーツ思考」(メルマガ)を主筆。https://genkina-atelier.com/sp/

公式サイトの国別メダル獲得一覧は五輪憲章違反 組織委は堂々と犯している

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 第32回オリンピック競技大会は7月23日に開会された。史上初の無観客で行われた開会式は静かなものだったが、世界から集まった選手たちの誇りと喜びに満ちた行進とこぼれる笑顔は、それだけで大会が開かれる意味を語っているようであった。彼らは4年に1度のチャンスに自らの全てを懸け、自国の代表となった。自分の愛する競技で自己の力の限りを尽くして戦う姿が愛する国の人々の生きる力になる。だが本来、彼らの戦いは国のための戦いではない。

 これまで五輪中止論を展開してきたメディアも競技が始まればメダル狂騒曲を始める。オリンピックの意義を問うことは二の次だ。自国選手の活躍を伝えることが主眼となる。その最たるものが新聞を飾る国別メダル一覧である。これまでも誰もが当然のごとく受け入れてきたものだ。

 しかし、実にこれほどオリンピックの精神に反したものはない。オリンピック憲章は「オリンピック競技大会は、個人種目または団体種目での選手間の競争であり、国家間の競争ではない」と規定している。国と国との戦いを超え、ナショナリズムを超える思想がオリンピズムである。

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