【追悼】ターザン後藤さん 本紙に語った5年前の再婚と大仁田厚引退試合直前の退団騒動

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 全日本プロレスやFMWなどで活躍したプロレスラーのターザン後藤さん(享年58)が29日、肝臓ガンのため亡くなった。

 後藤さんは今年1月24日配信の日刊ゲンダイに登場。5年前に再婚した3歳下の好江さんが店長を務める、東京・押上の町中華「太楼ラーメン」で元気に中華鍋を振る姿を見せてくれていた。

 好江さんとの馴れ初めやデスマッチレスターとして活躍した当時の話、そして、95年5月に大仁田厚の2回目の引退試合の相手に決まっていたものの直前になって退団したことについて話した後藤さんのインタビューを再掲載する。

 ◇  ◇  ◇

 大相撲初場所の最中だが、角界から転身したプロレスラーは多い。力道山はじめ、天龍源一郎、曙太郎、田上明ら枚挙にいとまがない。本日登場のターザン後藤さんもそのひとり。全日本プロレスでデビューし、移籍したFMWでは大仁田厚を相手に「ノーロープ有刺鉄線電流爆破デスマッチ」で大暴れした。さて、今どうしているのか?

野菜炒めに太楼ラーメンね。少々お待ちください」

 東京スカイツリーのお膝元、都内墨田区押上。押上駅から歩いて3分ほどの町中華「太楼ラーメン」へ行くと、ターザン後藤さんが厨房でオーダーを確認しながら中華鍋を振っていた。

「5年前の12月17日に、ここの店長と結婚しましてね。その際、義理のお母さんに『店のほうも、しっかり頼むね』って。そう言われたら手伝わないワケにはいかないですよ」

 白髪交じりの長い髪を後ろで縛り、口元はトレードマークのヒゲだらけ。額に刻まれたいく筋もの深い傷痕がデスマッチレスラーの勲章だ。

「お互い再婚。妻の連れ子で、31歳と27歳の娘の父親になりました」

 そもそも、どこで知り合ったのか?

「最初はお客だったんですよ。『ワンタンがおいしい』って評判だったから、9年前の夏に1人でブラッと。そうしたらなぜか、カウンターが空いてるのに案内されたのは奥の座敷。で、出されたのがワンタン抜きのスープ。でも感じが良くて、一目惚れってヤツですかね。ずっと通うようになったんです」

 一方、3歳年下の恋女房・好江さんは後藤さんを「“反社”稼業」と早とちり。無理もない。初来店時の格好は、サングラスに甚平姿。額はギザギザ、丸太ん棒のような腕も傷だらけだから当然だろう。

 好江さんが振り返る。

「とにかく顔を合わせず、早く帰ってもらおう、二度と来ないで、って。なので2回目以降も塩対応。いつだったか、レバニラ炒めを注文され、レバー抜きで出したこともありました(笑い)」

 風向きが変わったのは、常連に「ターザン後藤さんだよ」と教えられてから。話してみると、誕生日が同じで小学校の同窓生。「赤い糸が見えました」(後藤さん)
 
 大相撲出身で、米国時代にレストランで働いていただけに調理経験はある。だが「中華は難しい」と後藤さんは苦笑い。

「同じ材料と調味料、レシピで作るんだけど、義理の母や妻にはまだかなわない。5年経ってもまだ修業中です」

退団の真相は「墓場まで持っていく」

 静岡県島田市出身。中学卒業直後に九重部屋に入門し、1979年3月に初土俵を踏んだ。だが角界は肌に合わず8カ月ほどで廃業し、81年に全日本プロレスに入団。がむしゃらなファイトで注目を浴び、83年のプロレス大賞・新人賞を受賞した。

 85年から89年まで米国遠征。そして大仁田厚のスカウトで新団体「FMW」の旗揚げに参加し、“鬼神”のニックネームでデスマッチ路線を突っ走った。

 90年8月には、大仁田と史上初のノーロープ有刺鉄線電流爆破デスマッチを敢行。プロレス大賞・年間最高試合賞を受賞した。

「爆破の瞬間? 肉がね、バシッとはじける感じ。痛み自体、試合中はアドレナリンが出てるせいかあまりないんですが、リングを降りてから2、3日の間、やけどでジワジワと痛みが続きます。体の負担は大きいし危険。でも全日本や新日本に挟まれた中でFMWが生き残っていくには、他団体と違う目立つことしないとお客さんに来てもらえません。痛いだのつらいだのと言ってる場合じゃなかった」

 そんな中、95年5月、大仁田の2回目の引退試合の対戦相手に。だが直前に退団し大騒動となった。その原因やいかに?

「んー、これまで100回を超えるくらい同じ質問されてるんだけど、ノーコメントなんだ。真相は墓場まで持っていくつもり」

 新型コロナ禍のため試合は延期しているが、現在も2010年に旗揚げした「スーパーFMW」の代表であり現役レスラー。出勤前に4時間のトレーニングは欠かさない。同団体の事務所は1駅隣の曳舟駅そばのスナック「スーパーFMW 茜」にある。「太楼ラーメン」の営業は18時(日曜のみ15時)から深夜0時。閉店後は「茜」へ移動し、深夜2時(金・土曜は朝4時)まで接客をしている。(※新型コロナウイルス感染拡大等により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。来店時は事前に店舗に確認してください)

(取材・文=高鍬真之)

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