大谷2年連続本塁打王を支えた「漆黒バット」の謎を販売元に直撃…ヤ軍ジャッジも愛用「C」マーク

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 ドジャース大谷翔平(30)は今季、54本塁打、130打点で2年連続の本塁打王と初の打点王。ナ・リーグの2冠に輝いた。ポストシーズンでも3本塁打を放ち、左肩を負傷しながらチームを牽引している。一方、ポストシーズンで不振が続くヤンキースのアーロン・ジャッジ(32)もレギュラーシーズンで58本塁打、144打点でこちらもア・リーグ2冠。メジャーを代表する2人の長距離砲には共通点がある。ともに米国に拠点を置く「チャンドラー・バッツ(以下チャンドラー社)」のバットを愛用しているのだ。

 2021年に株式会社エスアールエスを設立し、チャンドラー社の輸入総代理店を務める宇野誠一社長(56)に特徴などを聞いた。

■機密事項と口を閉ざし…

 ──昨春、侍ジャパンWBC強化試合で大谷が阪神才木浩人のフォークを左膝をつきながら右手一本でバックスクリーンへ一発。漆黒の「C」バットが話題になった。

「私は昨年2月のエンゼルスのスプリングキャンプで、ケージから豪快に打球を飛ばす大谷さんの映像を見て、これはもしかしてうちのバット? と知りました」

 ──大谷は22年まで全身アシックスの契約だったが、エンゼルス最終年の23年からバットをチャンドラー社に変更。日本では馴染みが薄かったが、なぜ変更を?

「以前からチャンドラーのバットを使っていたジャッジが、前年の22年に62本塁打でア・リーグ記録を塗り替えたのが大きかったんじゃないでしょうか。大谷さんは変更した23年に日本人初の本塁打王になったから、相性が良かったのでしょう」

 ──大谷は同じタイミングでグラブ、スパイク、小物などをニューバランスに変更。契約金が40億円超えなどといわれます。チャンドラー社も億単位の契約金を?

「米国の本社とやりとりをすることがありますが、大谷さんについては『コンフィデンシャル(機密事項)』と言われ、明かされません。メジャーリーガーが多く使うマルチ社やビクタス社は金属バットも生産していますが、チャンドラーは木製しか作っていないため、マーケットは限られます。これは臆測ですが、億単位の契約金などは一切なくて、本当に好きで使っていただいているんじゃないかと思います」

 ──「打球の最後のひと伸びが違う」と言いますが、バットにはどんな秘密が?

「飾っておきたいくらいピカピカで『きれいなバットだな』というのが第一印象。塗装技術が高いんでしょうね。メープル(カエデ)でもハードメープルという素材を使っていて、チャンドラー社のは特に硬いといわれています」

 ──大谷が使うようになって人気が出た?

「今はNPBでも使えます。実際使用している選手は、22年は10人ちょっとでしたが、昨年は40人ぐらいまで増えました。間違いなく大谷さんの効果ですね。もともとロッテにいたレオネス・マーティンに頼まれて日本代理店となってNPBでの使用認可を取りました。日本ではタイラー・オースティン(DeNA)やグレゴリー・ポランコ(ロッテ)といった外国人選手が多い。昨年は大谷モデルをそのまま使いたいという要望が多かったのですが、日本人選手には難しいかもしれません」

長さはノックバット級

 ──難しい?

「大谷さんが使うバットがどういうものなのかという興味で、一度手にしたいという選手が多い。でも、『硬くて難しい』という声が多かった」

 ──大谷は21年にアシックス社製を使用していた際、33.5インチ(85.1センチ)、32オンス(約907グラム)のバットだった。21年には、しなりのあるアオダモから硬い打感のバーチ(樺)に変更している。

「昨年チャンドラーに変更したのを機に、素材をメープルに替え、長さ34.5インチ(約87.6センチ)の長尺バットを使い始めました。重さは32オンスで変えていません。日本人選手は大谷モデルを短いモデルに変更していました。私は千葉の市川リトルシニアで監督を務めていますが、ノックバットが89センチですから、ほとんど変わりません。大谷さんのようなフィジカルがないと、長すぎてインコースをさばけません」

■右肘手術後に14グラム軽量化

 ──今年は?

「エンゼルス時代の昨年の30号から40号の間は、0.5インチ短い34インチ(約86.4センチ)のものを使用していました。ドジャースの一員となった今年は、昨年の終盤と同じ34インチで、31.5オンス(約893グラム)に軽量化して新天地へ乗り込んでいます」

 ──なぜ軽量化?

「私の考えですが、昨年秋に右肘を手術した影響もあって、短く、軽くしたことは考えられます。今は軽いバットが主流で、160キロを打ち返さないといけない。木材の強度は重さとほぼ比例します。160キロに対応しようと軽量化すれば、アオダモのように弾力性に富んだバットでは当たり負けしますから、しなりより素材を硬くしていったというところでしょう。でも、日本人選手のほとんどが『硬すぎる』と言います。硬くて折れにくい半面、芯を外した時のしびれは大きい。大谷さん、ジャッジ、オースティンといったフィジカルが強い人しか使いこなせません」

 ──1本の値段は?

円安の影響もあって今は3万8500円で販売しています。学生のためにも、もっと安価で提供したいのですが……」

 ──宇野社長の三男の早実・真仁朗選手もチャンドラーのバットを使って今夏の甲子園で活躍。先のドラフトソフトバンクに4位指名された。

「早実のマシン打撃は速いので、先っぽで打つとすぐに折れます。1本4万円近くするので、金属バットで練習して、試合の時だけ使うように言っています(笑)」

(聞き手=増田和史/日刊ゲンダイ

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