「インパクトはパン、パン、パーンよ」 ミスター流指導の“擬音連発”に選手は困惑しつつも…
「パンパンパンってなんなんですかね?」
「おまえはインパクトがパンで終わっているから、パンパンパンっていうのは、一度打ったら、もう一つ、もう一つ振り切りなさいってことを言っているんだ」
「分かりました」
これが有名なミスター流か。こういう教え方があるのかと驚いた。同時に自分にはできないと感じた。実績のある長嶋さんの言葉の重み、オーラがあればこそ成立するもので、実績のない私には到底無理である。指導者として何ができるのかを考えた時、選手と一緒に汗を流し、選手の成長を手助けする指導をしつこく続けるしかない。そう心に決めたのがこの時だった。
長嶋さんの指導をメモしたキャンプから10年後。広島で二軍打撃コーチを務めていた私に、第2次政権が始まった長嶋監督率いる巨人からオファーが届いた。「ファームで若い選手を育てて1人でも2人でも上に押し上げて欲しい」と言われ、縁もゆかりもない私が巨人のコーチになった。以後、巨人では計16年間ユニホームを着させてもらった。長嶋監督は恩人である。