パワーリフティング日本王者・小林和沙さんを直撃! “2児の母”が経験した挫折と新たな挑戦
アームレスリングとストリクトカールで優勝
──6月に川崎で開催されたアームレスリング「腕王」でも優勝。日々のトレーニングの成果が出ていますね?
「アームレスリングは力はもとより技が大事になる部分が大きい。実はこの大会では2回戦で負けていて、敗者復活で勝ち上がって2回戦で負けた相手に2度勝って優勝を手にしました。負けたときに、道場の関係者の体験コーナーがあってそこで技を即席で教えてもらい、巻き返したという次第。また、先日行われた別の大会でも優勝候補相手に善戦できたのは、デッドリフトで鍛えた背筋のおかげだと思います。アームレスリングは前腕や上腕二頭筋(力コブ)を使う競技ですが、ベンチプレスは上腕三頭筋(腕の後ろ側の筋肉)を使うので普段のトレーニングではほとんど使わない筋肉なのです。他にも、ストリクトカールという壁に背中をつけて小型のバーベルを腕だけで持ち上げる競技でも優勝しました。ログプレス(競技用の丸太を頭上に持ち上げる)にも挑戦していてこちらは2位でした。新しい競技に挑戦することでいろんな人と出会えることを楽しみながら、改めてパワーリフティングってすごいなと実感しています」
──日本一になると、今度はタイトルを守る側。そのプレッシャーは?
「タイトルを守るというよりは、日本記録を常に更新していきたいという気持ちが強いですね。とにかく他の人に抜かれたくない。パワーリフティングは過去の自分に勝つというのが大事な競技。みんなが記録を狙って攻めてくるので、超えられない記録を常に更新し続けるのが使命のようになっています。元々プレッシャーはあまり感じない性格みたいなので、よく人から『本番に強い』なんて言われることがありますね」
──世界大会に向けて「フォーム改造」をしたようですが、実はそれが仇となったみたいですね?
「7月開催のアジア大会(兵庫県)に出場するにあたって、出場経験がある人たちから『世界基準では厳しいよ』と言われていました。世界経験のあるベテランの元選手から今のフォームだと記録として残るかは怪しいとの指摘もあった。そこでアドバイスを参考に得意のデッドリフトを直前の練習でフォームを変えてみたのです。結果はフォームが崩れて三振(3試技失敗)で失格。本来ならアジア記録の170.5キロを挙げていたわけですから、悔やまれてなりません。知り合いの審判からは『なぜいつも通りにしなかったの?』と声をかけられ、残念がられました。周囲の声に流されて中途半端にいじくり回したことが結果的に仇となりました。振り返ってみると世界がどうのは二の次で、毎日の練習で培った自分の力を信じていればよかったですね」