07年日本S、落合監督とオレが完全試合継続中の山井を八回で降板させた本当の理由(上)
「あの時、ボクがもし、行かせてくださいって言っていたら、どうしてましたか?」
山井が「あの時」と言ったら、日本ハムと戦った07年の日本シリーズのことしかない。
中日の3勝1敗で迎えた第5戦、完全試合を続けていた山井を八回で降板させ、抑えの岩瀬につないで日本一になったあの試合である。
日本シリーズでの完全試合は、長いプロ野球の歴史でも一度も達成されていない。それだけに、山井の降板には球界中の非難が集中。オレたちはそれこそ袋叩きに遭った。
真相を明かす。オレの口から言うのは初めてだ。
五回だった。打席に向かう山井がベンチに座っているオレの前を通ったとき、イヤなものが目に入った。ホームの白いユニホームの右太モモあたりに、小さな赤い染みが2つ付いていたのだ。呼び止めるまでもなく、すぐに分かった。指先のマメを潰したな--。山井はマメができやすく、投球中にそれを潰すことがこれまでにも何度かあったのだ。
好投を続けている山井のリズムを崩したくないから、本人には言わなかったものの、分かってしまったからにはどうしても気になる。それから、ファウルボールが転がってくるたび、それをボールボーイに持ってこさせて確認すると、回を追うごとにボールに付いた鮮血が大きくなっていた。