07年日本S、落合監督とオレが完全試合継続中の山井を八回で降板させた本当の理由(上)
山井は六回も七回も3者凡退。ベンチに戻ってきた山井にここで初めて「マメは大丈夫か?」と聞いた。聞きながら右手の先を見ると、かなりの血が付いている。山井は「大丈夫です」と答えたが、この時点で試合は1-0。当然、万が一のことを考えておかなくてはいけない。ブルペンでは抑えの岩瀬に八回からでも行けるように準備をさせていた。
このシーズンは開幕前から、落合監督が中日としては53年ぶりとなる日本一を最大にして唯一の目標に掲げていた。選手の誰もが、それだけを目指してシーズンを戦ってきた。先発投手はとにかく「九回の岩瀬につなごう」を合言葉にし、オレも1-0の完封試合だろうがなんだろうが、「最後は岩瀬」という継投を徹底していた。
だから、この日本シリーズだって普通なら迷わず岩瀬への継投だ。しかし、山井は普通じゃない投球を続けている。八回を終えてなお、完全試合なのだ。とはいえ、試合は1点差。一発を打たれれば同点である。完全試合をやっているということは、山井は一度もセットポジションで投げていない。1人でも走者を出せば、一気に畳みかけられる可能性がある。この試合を落とせば、3勝2敗。決戦の場は敵地に移り、中日と相手のローテーションを考えれば、逆転で日本一をさらわれる恐れもあった。