柔道五輪金メダリスト・松本薫さんは2週に1度ファミリーフィッシングで堤防へ「胸の奥には大物への渇望がくすぶっています」
松本薫(柔道女子五輪金メダリスト)
私の釣りデビューは幼少期、父に連れて行ってもらったのが始まりです。柔道に専念するうちにすっかり距離が遠くなっていましたが、2016年の結婚が転機になりました。
夫の実家が高知県で、お義父さんは生粋の釣り人。毎週のように仲間たちと船に乗り、漁師さながらの大漁で帰ってくる。帰省するたび、カツオやヒラメなどなど食卓には新鮮でおいしい季節の魚が並び、冬には巨大なクエで鍋を囲むことも。それが本当においしくておいしくて。釣った魚の写真を見るたび、私もまたやりたいという気持ちが自然に湧き上がってきたんです。
17年に長女を出産。19年に現役引退し、ようやく時間がつくれるようになったので、友達と横浜から船に乗り、カワハギ釣りへ。しかし、船長さんが「昨日は釣れたんだけどねぇ」なんてボヤくくらい渋い状況で、一匹も釣れませんでした。悔しさにリベンジを固く心に誓ったのですが……。
ほどなくして息子を授かったことで慌ただしくなり、釣りへの思いは封印することになりました。
それから数年。息子が成長して堤防に連れて行くとすっかり夢中に。以降、息子の熱量に押される形で、春と秋は2週に1度、家族4人で伊豆の堤防へ繰り出しています。
釣りはただの遊びではなく、子供たちの成長を支えてくれる大切な学びの場になっています。
息子は「命をいただく」ということを理解し始めたようです。釣った魚にどれだけ愛着が湧いていても、最終的には食べなければいけない。その体験を通じて、以前は時々あった食べ残しが、魚に関してはまったくなくなりました。娘にしても、家ではYouTubeばかり見て過ごしていますが、親としてはもっと体を動かしたり、外の世界を知ってほしい。その点、釣りは自然に触れられるし、デジタル端末とも距離を置けるから、うってつけのアクティビティーです。