「僕はもうすぐ死ぬんです」…俺の中で今も生き続ける歌手・池田貴族さんの言葉
なんとか会に駆けつけたものの、麻酔の影響で頭はボーッとする。大はしゃぎするチームメートを椅子に座って眺めるのが精いっぱいだった。
そんな中、ある人から声をかけられた。歌手の故・池田貴族さんだ。名古屋出身で熱狂的な中日ファン。このときが初対面だった。会場にいた貴族さんに「おめでとうございます」と言われ、「ありがとうございます」と返した俺は、こう続けた。
「いやあ、でもこの通り骨折しちゃって、日本シリーズも出られないからめちゃくちゃ悔しいし、残念。情けなくて本当やってられないですよ」
すると貴族さんは「また頑張ればいいじゃないですか」と返してきた。それはみんなそう言うよ……と思ったが、貴族さんは優しい声でこう続けた。
「僕はもうすぐ死ぬんです。もう来年には命がないんですから。でも、山﨑さんはまだこれから頑張って優勝を目指せるじゃないですか。いくらでもやり直せるんだから、元気出してくださいよ」
貴族さんは末期がんだった。その言葉に心を打たれ、モヤモヤしていた気持ちが吹き飛んだ。


















