焼酎をブチまけられ「カッときて…」 ファンと一触即発になった小倉球場での西鉄戦
前身となる阪急軍から数え、今年で球団創設90周年を迎えた阪急ブレーブス(現オリックス・バファローズ)。当時のパを代表する名手を幾人も輩出する中、ひときわ異彩を放っていたのが森本潔だ。球界から突如消えた反骨の打者の足跡と今を、ノンフィクションライターの中村素至氏が追った。(毎週木曜掲載)
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1972年6月13日、小倉球場での対西鉄ライオンズ戦。試合終了後に事件は起こった。
「試合中、三塁側スタンドから野次りまくっていた西鉄ファンがいた。そいつらが、俺たちのいる三塁側ダッグアウトの後ろ側の隙間から、焼酎かなんかをぶちまけやがったんだ。俺もカッときてね、『降りてこい!』と怒鳴ったかもしれない。手は出してないよ」
実際にその場面を見ていた元阪急投手・宮本幸信の記憶によれば、「森本さんがお返しにバケツの水をかけた」という。
「ああ、そうだったかもしれん。でもケガはしないよね。相手が悪いとはいえ、まあやっちゃいけないことだけど」
ところが、これで騒動は終わらなかった。水をかけられた西鉄ファンたちが、阪急の宿舎前に待ち構えていたのである。球場からのバスが宿舎前に着くと、「森本を出せ!」と、怒声が響いた。
「張本人の俺が出ていったら大変なことになるから、俺は待機させられていた。その後どうやって決着したのかはもう覚えていない」
騒動の一部始終を見ていた宮本が語る。
「宿舎前に集まった西鉄ファンをバスの中から見て、『どうしますか?』と周囲に訊かれた西本監督が『俺が一人で行く』と言ってバスを降りていったんだよ。しばらくして、『監督を一人で行かせたら危ないだろ!』という声が上がって、慌ててマネージャーが追いかけていったんだよ」
たった一人で話をつけるために歩いていった西本の後ろ姿が、宮本には任侠映画の一シーンのように記憶に焼き付いている。
「あのときの西本さん、かっこよかったなあ」
宮本によれば、グラウンド外でも森本の武勇伝があったという。
「西京極球場(当時、阪急ブレーブスの準本拠地球場)からの帰路に、森本さんの車が今でいう煽り運転の車に追い越された。『追い越し方が気にいらない』と、追いかけたが、そのときに車が接触して、森本さんの国産車はかなり損傷した」
森本の気の強さを示すエピソードであるが、本人は全く記憶にないという。
「そんなことあったかなあ。でも、ミヤが言うのなら本当なんだろう。それよりも、車の運転では新聞に載った事件があったんだよ」
当時の森本の住所から類推すると、71~72年頃のシーズンオフの出来事らしい。
「自動車で物損事故を起こして、免停中に運転してしまったんだよ」
かつて西武ライオンズのスター選手が免停中に無免許運転、駐車違反をした上、球団職員に身代わり出頭させた事件があった。さすがにこれは悪質だったので、球団から謹慎処分が科せられたが、森本の場合、シーズンオフの事件でもあり、球団からのペナルティはなかった。しかし、地元関西の新聞記事には載ったことから、以降、球場でのヤジに悩ませられることになる。
(中村素至/ノンフィクションライター)



















