故・野村克也氏のMTGは人生論から始まった…僕が今も大切にする大学ノート4冊

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飯田哲也氏による「すべては野村ヤクルトが教えてくれた」(第3回=2020年)を再公開

 日刊ゲンダイではこれまで、多くの球界OB、関係者による回顧録や交遊録を連載してきた。当事者として直接接してきたからこそ語れる、あの大物選手、有名選手の知られざる素顔や人となり。当時の空気感や人間関係が、ありありと浮かび上がる。

 今回はあの故・野村克也氏ついて綴られた、飯田哲也氏による「すべては野村ヤクルトが教えてくれた」(第3回=2020年)を再公開。年齢、肩書などは当時のまま。 

  ◇  ◇  ◇

 野村ノート。その存在は、ファンの方の間でも有名でしょう。野村監督の著作にもあります。野村監督のミーティングの中身をまとめたものですが、当時はもちろん、そんな書籍は出版されていません。監督の話、板書を必死になってメモを取りました。僕の場合は大学ノートで計4冊、今も大事に取ってあります。

 ミーティングが行われていたのはキャンプ中の夕食後。毎日、夜の8~9時に行われた夜間練習の前に、選手を集めて授業が始まります。

 監督就任1年目、1990年の米ユマでの春季キャンプが最初でした。野村新監督がどういう人なのか、どんな野球をやるのか、就任が発表されてからというもの、選手の間では野村監督の話題で持ちきりでした。

 球団OBが監督になるケースが多い中、野村監督はヤクルトと縁もゆかりもありません。僕も監督の現役時代は映像でしか知りませんでしたが、それでも解説者、評論家として活躍されていたので、「凄い理論を持った人が来る」という印象。楽しみでもあり不安でもあり、どんな野球をするんだろう? と、興味津々でした。

 その1発目のミーティングで度肝を抜かれました。今でこそ野村ノートは有名ですが、いきなり人生論から入る指導者なんて見たことも聞いたこともない。人生とは、人間とは、社会人とは……そういった話が1週間くらい続きました。

 なんというか、まるで企業の新入社員の研修のようでした。高卒でプロ入りした僕は、サラリーマンの世界の実際のところはわかりません。ただ、そのミーティングで「この人は凄い」と心底思ったのは事実です。今でも思いますが、あれは本当に貴重な時間でした。

 中でも「人にどう見られているか、考えた上で野球をしなさい」という教えは新鮮でした。

「野球に関わっている時間より、野球をやめてからの方が人生は長い。だからしっかりした社会人になるのが大事」

 口を酸っぱくして、そう繰り返されました。

 人生論、そして野球の話などをホワイトボードに書いてはしゃべり、また書いて……。僕ら選手は必死にノートを取る。ミーティングはだいたい1日1時間半から2時間くらいですけど、時には3時間近くになることも珍しくなかった。話し好きですからね、野村監督は。

「話が乗ってきたから、もう少し続けるか」

 とか、

「ちょっとキリがいいところまで話させてくれ」

 なんて言って、結局、夜間練習が中止になったことも何度かありました。

▽いいだ・てつや 1968年5月、東京都調布市生まれ。千葉県の拓大紅陵高を経て、86年ドラフト4位で捕手としてヤクルト入団。日本一と称された中堅守備と俊足を生かした打撃でヤクルト黄金期を支えた。2006年に楽天で引退。07~13年はヤクルトで、15年から昨季までソフトバンクでコーチを務めた。現役通算1505試合で1248安打、363打点、48本塁打、234盗塁、打率.273。ゴールデングラブ賞7回(91~97年)、92年盗塁王。日本シリーズ優秀選手賞2回(92、93年)。

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