「明日の子供たち」有川浩著

公開日: 更新日:

 三田村慎平は、ソフトウエア会社の営業マンから児童養護施設職員へ転職した26歳の青年。勤務先の「あしたの家」は、小中高合わせて90人の児童を要する県内でも歴史が古い大規模施設だ。

 念願かなって初出勤した慎平は、散らかっていた靴を片付けようとするが、気まぐれな親切はかえって子供を駄目にすると先輩職員の和泉に一喝される。現場のシビアさを突きつけられた慎平だが、ベテラン職員の猪俣の助けも得て徐々に職員や子供たちから認められるように。

 しかし、大学進学希望者を積極的に支援すべきという和泉と、施設退所後の経済的負担を考慮して就職を勧めるべきという猪俣とが対立。さらに、児童養護施設の当事者活動を支援する施設の出入りを禁止されたことに抗議して、生活態度も成績もいい「問題のない子」の奏子が家出してしまう。問題が山積する中、持ち前の明るさと人一倍のやる気で慎平は深刻な事態を打開していく…。

 複雑な児童養護施設の内実に迫って、当事者に寄り添った支援の在り方をも訴えかける上質のエンターテインメント長編小説。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    JリーグMVP武藤嘉紀が浦和へ電撃移籍か…神戸退団を後押しする“2つの不満”と大きな野望

  2. 2

    広島ドラ2九里亜蓮 金髪「特攻隊長」を更生させた祖母の愛

  3. 3

    悠仁さまのお立場を危うくしかねない“筑波のプーチン”の存在…14年間も国立大トップに君臨

  4. 4

    田中将大ほぼ“セルフ戦力外”で独立リーグが虎視眈々!素行不良選手を受け入れる懐、NPB復帰の環境も万全

  5. 5

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  1. 6

    FW大迫勇也を代表招集しないのか? 神戸J連覇に貢献も森保監督との間に漂う“微妙な空気”

  2. 7

    結局「光る君へ」の“勝利”で終わった? 新たな大河ファンを獲得した吉高由里子の評価はうなぎ上り

  3. 8

    飯島愛さん謎の孤独死から15年…関係者が明かした体調不良と、“暗躍した男性”の存在

  4. 9

    巨人がもしFA3連敗ならクビが飛ぶのは誰? 赤っ恥かかされた山口オーナーと阿部監督の怒りの矛先

  5. 10

    中日FA福谷浩司に“滑り止め特需”!ヤクルトはソフトB石川にフラれ即乗り換え、巨人とロッテも続くか