「イチョウ 奇跡の2億年史」ピーター・クレイン著、矢野真千子訳

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 2億年前の大昔から、変わらぬ姿で存続してきた奇跡の植物・イチョウ。1億年前に陸上植物の勢力地図が変わったときも、6500万年前に恐竜絶滅が起きた時も、大氷河期を経て絶滅の危機を迎えた時にも、何とか生き延びて今では寺院や神社の境内や世界中の街路を彩る植物として存在している。

 本書は、そんなイチョウの生態を明らかにしながら、そのサバイバルの歴史を物語る。

 イチョウという植物の特徴は、現生する近縁種のいない孤立した種であり、「植物界の生きた化石」的存在であることと、今や人為的に植林されたものがほとんどであることだ。大気汚染にも害虫にも病気にも強く、ギンナンやイチョウ葉のエキスなどの有用性をヒトが見いだしたことが、絶滅寸前までに陥ったイチョウの復活の鍵となった。

 太古の地球の歴史とヒトをつなぐイチョウのサバイバル史は、目先の利潤を求める短期的視点ではなく、地球規模の生き物の営みという悠久の視点を授けてくれる。

(河出書房新社 3500円)


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