育児や介護など…「望まない転勤」による退職者が増加している切実な背景
「退職理由は『転勤』辞令」。人手不足のなか、企業は人材獲得、従業員の退職引き留めのため人事制度の見直しにさまざまな対応を見せている。
東京商工リサーチが8月28日に発表した「2025年企業の『転勤』に関するアンケート調査」によると、直近3年で異動や出向などに伴う「転勤」を理由にした従業員の退職を、大企業では38%が経験していることが明らかになった。
会社都合の転勤は、サラリーマンにとって原則断ることは難しい。断ればキャリアにとってマイナスの対象になる可能性が大きいからだ。だが、「望まない転勤」に直面し退職を選択する従業員が増えているのだ。こうした実態を調査した情報本部・本間浩介氏がこう述べる。
「夫婦共働きの世帯が増え、育児や介護など生活の大きな負担となる事態が広がってきている。また、退職後の転職市場が急拡大し、再就職の場が見つけやすくなっていることが挙げられます」
転勤や配置転換、グループ会社への転籍で実績のある大企業は75.6%に達する。産業別では金融・保険業が60%と最多だ。転勤を敬遠する動きは新卒者の就職活動にも大きな影響を及ぼしている。学生や企業の採用、雇用状況を調査しているキャリタスリサーチが今年2月、26年卒業予定の学生に企業の転勤について調査した結果「就職後に転勤したくない」とする回答が74.5%に及んだ。転勤に関わる人事制度の見直しが企業で広がってきているのも必然だ。