「イスラーム国の衝撃」池内恵著

公開日: 更新日:

 いま最も注目株の中東地域研究者によるタイムリーな概説。2011年の「アラブの春」がもたらしたのは中東各国の統治体制の揺らぎと弱体化。そこに乗じて台頭したのがイスラム国だ。指導者のアル・バグダディは「カリフ」(最高指導者)を名乗る。これは全世界のイスラム教徒(ムスリム)の指導者を主張したことと同じ。各国のイスラム学者(ウラマー)はこれを認めないが、バグダディは独自の学識とカリスマで相当な説得力を発揮していると著者はいう。

 米国に追い詰められたアルカイダがアフガン・パキスタン国境を拠点に勢力を回復し、まるでフランチャイズ網のように自発的な賛同のネットワークが出現するなどの新状況が生じたことが、背景にある。アルカイダと違ってシリアとイラクで領域支配に成功したイスラム国は、いわばアルカイダの「別ブランド」化のように登場したのだ。

 さらに欧米諸国ではアルカイダやイスラム国に刺激された若者たちが「勝手にアルカイダ」的に単独テロを起こす事件が続発。こうして一匹オオカミ的なテロをも含む「グローバル・ジハード」に至ったのだと説く。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    国分太一が「世界くらべてみたら」の収録現場で見せていた“暴君ぶり”と“セクハラ発言”の闇

  2. 2

    清原和博氏が巨人主催イベントに出演決定も…盟友・桑田真澄は球団と冷戦突入で「KK復活」は幻に

  3. 3

    巨人今オフ大補強の本命はソフトB有原航平 オーナー「先発、外野手、クリーンアップ打てる外野手」発言の裏で虎視眈々

  4. 4

    元TOKIO松岡昌宏に「STARTO退所→独立」報道も…1人残されたリーダー城島茂の人望が話題になるワケ

  5. 5

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  1. 6

    実は失言じゃなかった? 「おじいさんにトドメ」発言のtimelesz篠塚大輝に集まった意外な賛辞

  2. 7

    高市首相のいらん答弁で中国の怒りエスカレート…トンデモ政権が農水産業生産者と庶民を“見殺し”に

  3. 8

    ナイツ塙が創価学会YouTube登場で話題…氷川きよしや鈴木奈々、加藤綾菜も信仰オープンの背景

  4. 9

    高市首相の台湾有事めぐる国会答弁引き出した立憲議員を“悪玉”にする陰謀論のトンチンカン

  5. 10

    今田美桜「3億円トラブル」報道と11.24スペシャルイベント延期の“点と線”…体調不良説が再燃するウラ