「東京ブラックアウト」若杉冽著

公開日: 更新日:

 物語は、福島の原子力発電所事故から3年以上経過した東京から始まる。原子力規制庁の守下靖は、毎週金曜日夕刻に行われる脱原発デモを横目に、内閣府本庁ビルに向かった。目的は、原発事故の避難計画に関してどこが汚れ仕事を引き受けるかを話し合うため。関係各省庁の駆け引きや出世への打算が渦巻くなか、どこも責任をとらなくていい形が整えられていった結果、ついに全国で15基の原発が再稼働された。ところがその年の暮れ、送電線鉄塔の倒壊が勃発。大規模停電が発生したため、原子炉の冷却システムも停止し、再びメルトダウンが起こる。役に立つはずもない避難計画を前に、原発の地元に、さらには大都市の住民に何が生じるのか――。

「原発ホワイトアウト」を書いた現役キャリア官僚による最新作。小説という形をとりつつも、再稼働を画策する省庁の人間たちがどのように動き、その結果どんな未来が予想しうるのか、恐ろしくもリアルに描き出している。(講談社 1600円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    【広陵OB】今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  2. 2

    横浜高では「100試合に1回」のプレーまで練習させてきた。たとえば…

  3. 3

    健大高崎158キロ右腕・石垣元気にスカウトはヤキモキ「無理して故障が一番怖い」

  4. 4

    中居正広氏「秘匿情報流出」への疑念と“ヤリモク飲み会”のおごり…通知書を巡りAさんと衝突か

  5. 5

    広陵・中井監督が語っていた「部員は全員家族」…今となっては“ブーメラン”な指導方針と哲学の数々

  1. 6

    前代未聞! 広陵途中辞退の根底に「甲子園至上主義」…それを助長するNHK、朝日、毎日の罪

  2. 7

    渡邊渚“初グラビア写真集”で「ひしゃげたバスト」大胆披露…評論家も思わず凝視

  3. 8

    中居正広氏は法廷バトルか、泣き寝入りか…「どちらも地獄」の“袋小路生活”と今後

  4. 9

    あいみょんもタトゥー発覚で炎上中、元欅坂46の長濱ねるも…日本人が受け入れられない理由

  5. 10

    あいみょん「タモリ倶楽部」“ラブホ特集”に登場の衝撃 飾らない本音に男性メロメロ!