著者のコラム一覧
宮城安総工作舎アートディレクター

1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。1990年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなど幅広く手掛ける。

「タブロイド」は「小さくてスゴイ」

公開日: 更新日:

「コンサル100年史」並木裕太著

「持ち重りがする」という表現がある。本書の場合はその反対だ。見た目の予想を裏切るように、拍子抜けするぐらい軽い。秘密は本文用紙にある。ザックリとした肌触りの嵩高中質紙「アドニスラフW」と、新聞紙そっくりの風合いと、しっかりした厚みを兼ね備えた「タブロ」の2種類を使用。偶然なのか、ともに新聞用紙の製造ラインを持つ王子製紙苫小牧工場での抄造だ。

 空気がたくさん漉き込まれていることと、原料パルプの風合いを残したテクスチャーとの相乗効果で「厚いけれど軽くしなやか」な紙を実現している(ちなみに、本の厚さのことを「束」、本を厚くすることを「束を出す」という)。さて、読者がいま手にされている「日刊ゲンダイ」は「タブロイド新聞」と呼ばれる。そして普通の新聞より小ぶりなこのサイズを「タブロイド判」と呼ぶ。今回注目する紙「タブロ」はこれにちなんでの命名とのこと。

 では、タブロイドの語源は? と気になり調べると、意外にも発端は19世紀末、イギリスの製薬会社までさかのぼる。従来の「粉薬」を固め「タブレット(錠剤)」を開発、「タブロイド」なる商品名で売り出したところこれが大当たり。転じて「小さくてスゴイ」ものは飛行機であれ新聞であれ「タブロイド」なモノとなった。低身長だがグラマラスな女性を「トランジスタ・グラマー」というがごとし。「タブロイド」とは世相を映した流行語だったのだ。話がそれた。そもそも、「束が出る」用紙を選ぶことでふわりと軽い仕上がりを目指したデザインの意図は一体どこにあるのか?

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    注目集まる「キャスター」後の永野芽郁の俳優人生…テレビ局が起用しづらい「業界内の暗黙ルール」とは

  4. 4

    柳田悠岐の戦線復帰に球団内外で「微妙な温度差」…ソフトBは決して歓迎ムードだけじゃない

  5. 5

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    ローラの「田植え」素足だけでないもう1つのトバッチリ…“パソナ案件”ジローラモと同列扱いに

  3. 8

    ヤクルト高津監督「途中休養Xデー」が話題だが…球団関係者から聞こえる「意外な展望」

  4. 9

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  5. 10

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?