一冊で数倍楽しい短編アンソロジー文庫特集

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「名刀伝」細谷正充編

 人を切る恐ろしい武器でありながらも、機能と美しさを兼ね備えた芸術品として愛され続ける「名刀」。本書は、そんな名刀を題材とした短編を集めた異色のアンソロジー。

 冒頭の浅田次郎の「小鍛冶」の舞台は現代。刀剣鑑定を生業とする男の奇談という形をとり、のっけから意表をついてくる。他にも山本兼一の刀剣商ちょうじ屋光三郎シリーズの「うわき国広」、武士階級も消滅しもっぱら鑑賞用へと転化していく刀が最後に刀としての価値を試されることになった時代のエピソードを描いた津本陽の「明治兜割り」、人の怨念や情念のこもった刀剣ならではの怪談を描いた好村兼一の「朝右衛門の刀箪笥」など全7編。日本刀というマニアックな世界を思う存分堪能したい。(KADOKAWA 780円+税)



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