「あなたの空洞」伊藤たかみ著

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 妻の愛里が、20年目を迎えた結婚記念日に温泉に行こうと言い出した。本当は、俊之と愛里が同棲を始めて20年なのだが、3年目に子供が出来て慌てて入籍したものの、流産してしまい、以来、結婚記念日は同棲記念日に引き戻されていた。愛里は2人の思い出の場所・伊豆大島を20年ぶりに再訪したいという。筋腫が悪化した愛里は医師から子宮の全摘出を勧められ結論を出せずにいた。医師からは今後の出産の予定も確かめられたに違いない。愛里は決めかねているようだが、俊之は彼女が大切だからこそ子宮を諦めて欲しい。しかし、それをどのように伝えようか考えがまとまらない。(「あなたの空洞」)

 微妙な心の揺れを抱えて生きる人々の日常を描いた4つの物語を収録。(文藝春秋 1700円+税)



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