「人間臨終考」森達也氏

公開日: 更新日:

「組織に入ると、主語が一人称でなくなってしまうんですよ」

 坂本竜馬、弁慶、頭山満、そしてガガーリン、ラスプーチン、江青ほか歴史上の人物18人の臨終に現代日本社会の問題を絡ませ、著者の妄想を駆使してパロディー仕立てにした作品である。

 例えば石川五右衛門は釜ゆでになったが、その残虐な刑を命令した秀吉は、すっかり忘れて夕食を食べていたことに。だが、どちらかというと〈横死〉した人物を取り上げたものが多く、森氏流のスルドイ社会批判の目を向けている。

「取り上げたのは以前に取材していた人が多いですね。どういう人なんだろうと興味を持っていたんですが、死ぬ間際ってだいたいその人の人生が凝縮されていますから」

 注目したいのは、ナチスの幹部で、逃亡先のブエノスアイレスで発見され、処刑されたアイヒマンの項だ。著者はアイヒマン裁判にオウム真理教の麻原彰晃の裁判を重ねて見る。かつて「A」でオウム真理教の信者の映画を撮って、加害者を擁護するのかと非難されたことがあるからだ。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    JリーグMVP武藤嘉紀が浦和へ電撃移籍か…神戸退団を後押しする“2つの不満”と大きな野望

  2. 2

    広島ドラ2九里亜蓮 金髪「特攻隊長」を更生させた祖母の愛

  3. 3

    悠仁さまのお立場を危うくしかねない“筑波のプーチン”の存在…14年間も国立大トップに君臨

  4. 4

    田中将大ほぼ“セルフ戦力外”で独立リーグが虎視眈々!素行不良選手を受け入れる懐、NPB復帰の環境も万全

  5. 5

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  1. 6

    FW大迫勇也を代表招集しないのか? 神戸J連覇に貢献も森保監督との間に漂う“微妙な空気”

  2. 7

    結局「光る君へ」の“勝利”で終わった? 新たな大河ファンを獲得した吉高由里子の評価はうなぎ上り

  3. 8

    飯島愛さん謎の孤独死から15年…関係者が明かした体調不良と、“暗躍した男性”の存在

  4. 9

    巨人がもしFA3連敗ならクビが飛ぶのは誰? 赤っ恥かかされた山口オーナーと阿部監督の怒りの矛先

  5. 10

    中日FA福谷浩司に“滑り止め特需”!ヤクルトはソフトB石川にフラれ即乗り換え、巨人とロッテも続くか