「グアンタナモ収容所地獄からの手記」モハメドゥ・ウルド・スラヒ著、ラリー・シームズ編、中島由華訳

公開日: 更新日:

 米国は、9・11の後、テロとの戦いを名目に、キューバ南東部に位置するグアンタナモ基地内の収容所に、世界各地で捕らえた「テロ容疑者」を集めて尋問を行ってきた。領土外の収容所なら人道的待遇を義務付けた国際条約は適用されないとして、無期限の拘束や残酷な尋問も問題にされないまま放置されているという。本書は、テロへの関与を疑われてグアンタナモ収容所に送られ、何らかの罪状で裁判が行われることもないまま14年間拘束されているひとりの男による手記である。

 拘禁中に覚えた英語によって書かれた手書きの手記は、政府の検閲によって不都合な部分は黒塗りにされた上で編者の手に渡っているため、いたるところに黒塗り箇所が出現する。それでも家族にも知らされないまま収容所に送られ、暴力や暴言、睡眠妨害など、不当な目に遭った日常が、抑制のきいた文章から伝わる。「テロ」の言葉ひとつで、人権を簡単に踏みにじることが可能な現状に悪寒を覚える。(河出書房新社 2800円+税)


【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  2. 2

    前田健太は巨人入りが最有力か…古巣広島は早期撤退、「夫人の意向」と「本拠地の相性」がカギ

  3. 3

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  4. 4

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  5. 5

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  1. 6

    山本淳一は「妻をソープ送り」報道…光GENJIの“哀れな末路”

  2. 7

    大関取り安青錦の出世街道に立ちはだかる「体重のカベ」…幕内の平均体重より-10kg

  3. 8

    巨人・岡本和真が狙う「30億円」の上積み…侍ジャパン辞退者続出の中で鼻息荒く

  4. 9

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  5. 10

    光GENJIは全盛期でも年収3000万円なのに…同時期にジャニー&メリーが3億円超稼げていたワケ