「EU消滅」浜矩子氏

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ドイツがEUの覇権を独占する。“パックス・ゲルマニカ化”がEU消滅の要因となっています

 難民問題に揺れるEU。昨年11月にパリで起きた同時多発テロは人々を震撼させ、難民政策の見直しや域内の移動制限を求めるなど、加盟国間での不協和音を高まらせる要因となっている。しかし、EUの足並みの乱れは、今に始まったことではない。

「欧州統合の歩みは安全保障上の一体化から始まり、本来の狙いは政治統合でした。これによって欧州の平和が守られてきたことは事実ですが、しかし今、EU内の軋轢は複雑化し、EUを待ち受けているのは“消滅”の2文字だと私は考えています」

 本書では、1952年の欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)設立や、1967年の欧州共同体(EC)発足など、現在のEUに至る歴史を遡りながら、その政治制度や経済制度の構造を分かりやすく解説。政治統合に経済というテーマが加わることで起こった変質、そして単一通貨ユーロを採用するに至った背景など、EUの潮目を変えた出来事を読み解いていく。

 EUをユーロの導入へと突き動かした要因は、1990年の統一ドイツ誕生だ。統一ドイツマルクが最強通貨の地位を独占することを恐れたEUは、統一ドイツを封じ込める手段として、単一通貨の導入を一気に進めた。しかし皮肉なことに、EU域内市場の統合はもともと競争力のあったドイツのビジネスチャンスを拡大させ、ドイツがEUの覇権を独占する“パックス・ゲルマニカ化”を進行させてしまった。

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