• facebook  
  • twitter  
  • Facebook Messenger
北上次郎
著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「翻訳出版編集後記」常盤新平著

 常盤新平は1987年に「遠いアメリカ」で直木賞を受賞した作家で、2013年に亡くなっているが、若いころは早川書房に勤めた編集者であった。1959年に入社し、その10年後に退社して翻訳家となったが、本書はその早川時代の回顧録である。したがって1960年代の翻訳出版業界が、ここには描かれている。

 この回顧録を書いたのは1970年代の後半で、常盤新平が早川書房を辞めてからまだ10年足らず。記憶が鮮明のうちに書いたと思われるので、ディテールが克明だ。たとえば、パブリッシャーズ・ウィークリー(PW)を船便で取り寄せ、まだ出版されていない本の情報を必死で集めたこと。そのPWに、角川春樹が社長時代の角川書店が「人間の証明」の広告を載せたこと(版権を海外に売るための広告である)。1960年代は翻訳権の争奪戦もなく、穏やかな時代であったこと。探偵小説とSFのアドバンスは、125ドルから150ドルであったこと(1ドルが360円の時代である)。常盤新平が版権を取ったなかでいちばん売れたのは、「ゴッド・ファーザー」であること。そういう興味深いことが次々に出てくる。

 翻訳ミステリーに興味のある人、翻訳出版そのものに関心のある人、そういう方々には必読の書といっていいが、翻訳の師でもあり、会社の先輩でもある福島正実に対するあつい感謝の念が、特に印象深い。(幻戯書房 3400円+税)

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のBOOKS記事

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    錯乱答弁を連発 テレビ討論でバレた安倍首相の薄っぺらさ

  2. 2

    “被害者”が激白 塚原夫妻の無責任指導とでっち上げの実態

  3. 3

    東京、神奈川、四国…“地方票”石破氏の猛追に安倍陣営焦り

  4. 4

    体操協会なぜ切れず? 塚原夫妻“職務一時停止”本当の目的

  5. 5

    交通遺児に残された亡父の車を競売に…劇的展開に感動の嵐

  6. 6

    二軍で“塩漬け”の巨人ゲレーロ 古巣中日勢に漏らした本音

  7. 7

    海外では国民が猛反発…「年金改悪」日本だけがやすやすと

  8. 8

    OBも疑心暗鬼 巨人・由伸監督“続投示唆”から急失速のナゾ

  9. 9

    最下位転落はすぐそこ…DeNAラミ監督の続投に2つの条件

  10. 10

    ラミ監督は窮地…DeNA“横浜回帰”で浮上する次期監督の名前

もっと見る