戦う相手はネット右派言論と内部圧力

公開日: 更新日:

 テレビのニュースアンカーは世論への影響力で権力者に最も煙たがられる「権力の監視人」。だがネット右派全盛の現代は、監視人が逆にネットから監視される時代でもある。その実例を描くのが先週末封切りの映画「ニュースの真相」。

 2004年、イラク戦争が泥沼化する中、ブッシュ大統領の兵役逃れ疑惑を追及した米CBS「60ミニッツ」のスクープが、逆にネットからでっち上げ疑惑を指摘されたあげくにアンカーの首まで飛んだ事件を劇映画にした。視聴者から見ると事件の主役は大物アンカーのダン・ラザー。

 しかし映画の原作はアンカーの背後で実際の取材を指揮した女性プロデューサー、メアリー・メイプスの手記。映画も彼女を実名で演じたケイト・ブランシェットを主役に、ラザー役のロバート・レッドフォードが相手役として展開。それだけにプロデューサーが味わった局からの圧力がよくわかるのだ。

 興味深いのは、ジャーナリズムの現場を描いた「大統領の陰謀」や「スポットライト 世紀のスクープ」などと違って、戦う相手が権力者ではなくネット右派言論であり、それを気にする社の上層部という点。つまりこの映画、組織ジャーナリストがいかに「上役」(=内部圧力)に弱いかを描いているのである。

 ジャーナリストは自分で自分を守るフリーランスであるべき、組織人には限界があると説いたのは、ベトナム戦争報道で知られた故岡村昭彦。「岡村昭彦の写真 生きること死ぬことのすべて」(美術出版社 2700円)は写真家としての彼を新たな視点から再評価している。〈生井英考〉

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 2

    農水省ゴリ押し「おこめ券」は完全失速…鈴木農相も「食料品全般に使える」とコメ高騰対策から逸脱の本末転倒

  3. 3

    TBS「ザ・ロイヤルファミリー」はロケ地巡礼も大盛り上がり

  4. 4

    維新の政権しがみつき戦略は破綻確実…定数削減を「改革のセンターピン」とイキった吉村代表ダサすぎる発言後退

  5. 5

    3度目の日本記録更新 マラソン大迫傑は目的と手段が明確で“分かりやすい”から面白い

  1. 6

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  2. 7

    粗品「THE W」での“爆弾発言”が物議…「1秒も面白くなかった」「レベルの低い大会だった」「間違ったお笑い」

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  5. 10

    巨人阿部監督の“育成放棄宣言”に選手とファン絶望…ベテラン偏重、補強優先はもうウンザリ