がん検診でむしろ早死にする!?

公開日: 更新日:

 芸能人のがんが報道されると、翌日からがん検診の受診者が増加するという。「がん検診で早期がんを見つけてもらった」、あるいは「もっと早くがん検診を受けていれば……」などと聞くと、がん検診は命を救うものというイメージも刷り込まれてしまう。

 しかし、本当にそうなのだろうか。岡田正彦著「医者の私が、がん検診を受けない9つの理由」(三五館 1200円+税)では、新潟大学名誉教授でもある医師が、数々の医学論文や学術データをひもときながら、がん検診の真実を明らかにしている。

 私たちががん検診を受ける理由は“死にたくないから”だ。つまり、がん検診が死亡する人の総数(総死亡)を減少させていなければならない。検診を受けた人とそうでない人を追跡調査することでそれは明らかになるが、実は総死亡が減少しているという確かなデータは存在しない。このような調査はランダム化比較試験と呼ばれるが、大腸がん検診では総死亡減少が認められず、胃がんや子宮頚がんでは試験自体が行われておらず、肺がん検診に至っては検診を受けた人の方が総死亡が多いという結果もあるのだ。

 がん検診による悲劇は過去にもあった。1973年、日本では小児がんである神経芽腫を早期発見する検診が誕生した。ところがのちに、神経芽腫の多くは治療をしなくても自然に治るものが多いことが明らかになった。2003年に厚生労働省は検診の中止を決定したが、その間、多くの小児が必要のない抗がん剤治療を受け命を落としてしまったのだ。

 小児がんだけの話ではない。悪性度が非常に高く早期の段階で転移が認められるがんがある一方、乳がんや前立腺がんでは無治療でも数年でがんが消滅したり、がんが大きくならずに天寿をまっとうしたというデータも数多い。がん検診は確かに早期発見に役立つが、必要のない治療が命を脅かしているとしたら、本末転倒と言うほかない。自分や家族にとってがん検診は本当に必要なのか、あらためて考えてみたい。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元横綱・三重ノ海剛司さんは邸宅で毎日のんびりの日々 今の時代の「弟子を育てる」難しさも語る

  2. 2

    巨人・岡本和真を直撃「メジャー挑戦組が“辞退”する中、侍J強化試合になぜ出場?」

  3. 3

    3年連続MVP大谷翔平は来季も打者に軸足…ドジャースが“投手大谷”を制限せざるを得ない複雑事情

  4. 4

    高市政権大ピンチ! 林芳正総務相の「政治とカネ」疑惑が拡大…ナゾの「ポスター維持管理費」が新たな火種に

  5. 5

    自民党・麻生副総裁が高市経済政策に「異論」で波紋…“財政省の守護神”が政権の時限爆弾になる恐れ

  1. 6

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 7

    沢口靖子vs天海祐希「アラ還女優」対決…米倉涼子“失脚”でテレ朝が選ぶのは? 

  3. 8

    矢沢永吉&甲斐よしひろ“70代レジェンド”に東京の夜が熱狂!鈴木京香もうっとりの裏で「残る不安」

  4. 9

    【独自】自維連立のキーマン 遠藤敬首相補佐官に企業からの違法な寄付疑惑浮上

  5. 10

    高市政権マッ青! 連立の“急所”維新「藤田ショック」は幕引き不能…橋下徹氏の“連続口撃”が追い打ち