「ドキュメントTPP交渉」鯨岡仁著
今月4日の衆院TPP特別委員会で、自公と維新が強行可決したTPP承認案と関連法案。黒塗りの資料に象徴されるように、内容も明かされず、たいした論議もなされないまま結論を急ぐ政府の姿勢に、疑問の声が広がっている。そもそも、TPPは、誰が、どのように構想したのか。過去6年間、TPP交渉の取材にかかわった著者が、TPP交渉の足跡から、今後のアジア経済覇権の行方を探った本だ。
2012年末、政権に返り咲いた安倍首相は、オバマとの直接交渉を経て当初反対していたはずのTPPを、安全保障と並ぶ日米同盟の二本柱として位置づけた。一方の米国は米国抜きのアジア経済圏の経済統合の機運を懸念。アジアインフラ投資銀行の設立を通して、中国を中心とした経済圏の形をつくろうとする中国がTPPの陰の主役であり、アジア太平洋の経済ルールを先に作ってしまいたい日米の意向が一致したところにTPPの狙いがあったと本書は指摘する。(東洋経済新報社 1500円+税)