著者のコラム一覧
太田治子作家

1947年生まれ。「心映えの記」で第1回坪田譲治文学賞受賞(86年)、近著に「星はらはらと 二葉亭四迷の明治」(中日新聞社)がある。

無理して同居するより自由なひとり暮らしを

公開日: 更新日:

「続・老後はひとり暮らしが幸せ」辻川覚志著 水曜社 1400円+税

 年を忘れたいと、いつも思っている。しかし60代の私は、20代の娘より明らかに歩くのが遅い。情けないと思う。今回、この本を読んで、老いにはいろいろなかたちがあることを、老いの中で希望や明るさを持つことの大切さを教えられた。

 著者の辻川ドクターの試みた60代以上の男女へのアンケートの答えは、どれも考えさせられるものばかりだ。一人一人が、とても正直に答えている。60代後半の女性は、ボランティアで散歩のときにゴミ拾いをやるようになって気分が変わってきたようだという。あるいは、水を飲んでもむせていたという70代後半の男性は、朝、夕の新聞を最初の5分間、音読するようにしたら、むせなくなったというのである。喉を使うことの大切さがわかる。

 私は今、「半分おひとりさま」の状態にある。都心に勤める会社員の娘は、およそ週の半分を東京の外れに住む母親の私の元に戻ってくる。そのことがこちらはうれしいのだが、彼女は完全なひとり暮らしをしたいという。ひとりでいて寂しいのは、一方的に母親の私の方なのだ。私は、娘に甘えている。

 辻川ドクターは、60歳以上の男女570人の方々に、寂しさと不安を中心に、詳細なアンケート調査をお願いした。当然のことながら、ひとり暮らしの場合、寂しさを訴える人の割合は多くなる。それでも、4割まで届かなかったという。不安に関しても、家族と同居している人とあまり変わりはなかった。むしろひとり暮らしの方が、「寂しさ」「不安」はあっても、満足度を保ちやすいのだと辻川ドクターはおっしゃる。

 そうなると、老後を暮らす上で一番大切な満足度を高めるためには、無理に同居して家族間の意思疎通がうまくいかないことでストレスをためるよりも、自由なひとり暮らしがおすすめということになるようである。それには、健康でいなくてはいけない。子供に迷惑をかけたくないと思ってがんばっていらっしゃる難病の70代後半のひとり暮らしのレディーのお話が、60代甘ったれママの私の胸に痛く染みた。

【連載】生き生きと暮らす人生読本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • BOOKSのアクセスランキング

  1. 1

    日本の課題がわかる「リチウム戦争」アーネスト・シェイダー著/ニューズピックス(選者:佐藤優)

  2. 2

    天皇と戦争の世紀(1)岸信介外相の入閣に異を唱えた昭和天皇

  3. 3

    天皇と戦争の世紀(2)軍部の「大権干犯に当たらず」の説明に苛立ち

  4. 4

    皿書店(豪徳寺)「開高健も書いているし、食の本の店にしよう。そんな感じで」1年前にオープン

  5. 5

    「埋もれてきたもうひとつの抑留の真実と、日本政府の冷淡を知ってもらいたい」──「モンゴル抑留 見捨てられた死者たち」井手裕彦氏

  1. 6

    天皇と戦争の世紀(3)無条件降伏の後、日本側が天皇制をどう死守したのか

  2. 7

    「いのち、見つめて」夏川草介、渡辺淳一ほか著|看取りの真意を問いかける傑作医療小説集

  3. 8

    まだまだ暑い!酷暑を意識から追い出すミステリー本特集(2)「能面検事の挫折」中山七里著

  4. 9

    よみがえった写真が伝える戦前戦時下の“時代の空気”「AIとカラーでよみがえる戦争の昭和史」別冊宝島編集部編

  5. 10

    まだまだ暑い!酷暑を意識から追い出すミステリー本特集(3)「『石球城』殺人事件」北山猛邦著

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    北島三郎(3)「北島ファミリー」の長女・原田悠里が語る御大

  2. 2

    「マクドは健康保険と年金に加入できてよかった」 シニアが働き続けるために必要なこととは?

  3. 3

    徳川光圀(1)水戸黄門は全国漫遊などしていない 主に出かけたのは江戸と領地の往復

  4. 4

    東京・蒲田の2駅結ぶ蒲蒲線、大田区と地元を取材して分かった実現のハードルと地元の思い

  5. 5

    東京・大井町、OIMACHI TRACKSと対照的な東小路飲食店街、商店街理事長が直面する2つの問題

  1. 6

    NHK夏の音楽特番「うたであえたら」は北川景子のMCが見事 カオスと化した近年の紅白はお手本に

  2. 7

    「山口組」抗争指定解除へ、それでも対立は続く…6代目幹部「喜ぶのは早い」

  3. 8

    バナナマン日村が簡単に復帰できそうにない「もう1つの理由」…レギュラー11本抱える人気者のジレンマ

  4. 9

    止まらない高市首相SNS発信に官邸総動員の実態…この週末は3日間で11連投も「ゴキブリ」投稿で大炎上

  5. 10

    清水アキラさんが三男急死の直前に語っていた“せがれ”のこと 良太郎さんに口説かれものまねショー復帰